「先祖供養は未来への投資」
35年間、天皇家・宮内庁・厚生労働省に代わって、日本の戦後処理を執り行ってきた
一般財団法人「梨本宮記念財団」(梨本隆夫代表理事)
多くの死・不幸を無駄にしないために
「歴史は繰り返す」という聞き飽きた警句が、コロナ禍で持ち出されたかと思えば、いま
や世界大戦前夜の様相を示しているロシアとウクライナの戦闘が続いています。
「泥棒にも三分の理」とか「嘘も100回繰り返せば真実になる」と言われる現実もあり
ます。
当事者にしかわからないことがあるとはいえ、21世紀の今日、敵味方を問わず、多く
の死者を増やしながら、一国のリーダーたちが互いに正義を主張している姿そのものが、
未来ある子どもたちには見せられない残念なできごとです。
いまだ、世界は平和を実現できるレベルにないことを物語っています。
3月16日、日本では3・11東日本大震災を思い出させる深度6強の地震が、再び東
北地方を襲っています。
大きな不幸は、地球そして自然の在り方に思いを馳せるとき、豊かで便利な物質文明の
反省材料として、当然起こるべきことだという思いを新たにさせます。
コロナ禍、戦争そして大災害など、次々に襲う不幸を前にして、多くの犠牲を無駄にし
ないために何ができるかを考えたとき、われわれにできることは、過去の死と不幸に真摯
に向き合うことです。
「先祖供養は未来への投資」と「ウエルネス@タイムス」でメッセージしているのは、過
去の死にしろ不幸にしろ、世の中のマイナス要素は、それが大きければ大きいほど、逆に
プラスに転じる大きな力になることを伝えたいがためです。
それは、なぜ先祖供養が伝統的に行われてきたのかということの意味を知ることにもつ
ながります。
死者の持つ力とは
戦後を振り返ってみてわかることの一つは、数えきれない犠牲者を出した先の大戦で、
焼け野原となった日本が、奇跡とも言える復興を遂げたことです。
そこには日本人の努力の他、アメリカの協力、時代環境など、様々な要因があってのこ
ととはいえ、日本の復興はその背後にそれを可能にするだけの多くの犠牲、多くの死があ
ったからだと指摘する人たちがいます。
そこに見えない力が働いているというのですが、そうした死者の力は、大量の犠牲者を
生んだ戦争からの復興だけではありません。
11年前の3・11東日本大震災でも、確実にわかっていることの一つが、被災地を取
材したジャーナリストなどが語っている、死者の持つ力です。
地震および津波の犠牲になった人たち、行方不明の人たち。無念の死を遂げた多くの霊
が彷徨っているとしか思えない、不思議な体験談が当時の被災地のあちこちで語られてい
ました。
海に浮かぶ不思議な光を見た話、幽霊を乗せたタクシードライバーの話など、よくある
怖い話の類とはいえ、死者にはもう一つの力があるというのが、例えば東北の生んだ大谷
翔平選手の活躍です。
これまでの野球の常識どころか、米メジャーの常識さえも超越しています。
それが可能だったのは、もちろん彼の才能、努力の賜物だとしても、本当にそうなのか
と考えたとき、案外、死者の力を味方にしたからこその活躍ではないのかというのが、死
者の持つ力を信じる者たちの指摘です。
そのベースにあるのは、無念の死を遂げた多くの犠牲者たちの思いを無駄にしたくない
ということ。つまりは死者を悼む意味、慰霊鎮魂の在り方です。それが「未来への投資」
ということです。
骨が語る、遺骨の不思議
今日の日本では、例えば大学で「神」という言葉・概念を持ち出すと、非科学的だとバ
カにされるため、苦労して「サムシング・グレート」と言ったり、いかに神という言葉を
使わずに、物理や科学を語るかに腐心するという、何とも不幸な時代になっています。
世間でも「天の風になって」の歌にあるように「お墓の前で泣かないでください。そこ
に私はいません」と、まるでお墓参りなど無駄だという風潮が蔓延しています。
「自分が大事」という西洋由来の個人主義の行き着く、当然の姿とはいえ、私たちは誰も
が一人で生まれてきたわけではありません。
必ず両親がいて、その両親にも両親がいるという具合に、命のリレーを続けて一家をな
し、今日の日本そして世界があります。
そこでは、死は終わりのようでいて、終わりではありません。
当たり前ですが、遺体も遺骨も、ただのモノではないので、祖先から連綿として受け継
がれることによって、大いなる世界の「遺産」となっているわけです。
先祖供養や遺骨に何の意味も感じないという人がいる一方、75年以上前の戦没者の遺
骨を収集し、慰霊の旅を続けている人たちがいます。
その大きな理由の一つは、フィリピンをはじめ、多くの戦死者を生んだ戦地に行けば、
死んだ者たちの霊が現れて、彼らが「日本に返りたい」と語る声が聞こえるからです。
遺骨の不思議さ、骨が語る例はいろんなところにありますが「ウエルネス@タイムス」
記者がハワイで聞いた話は、歴史の真実となっている希有な例です。
その昔、大英博物館にハワイ原住民の遺骨が納められていたのですが、夜中にガタゴト
変な音がすると、大騒ぎになったことがありました。
結局、ハワイから持ち去られた遺骨が、深夜ガタゴト音を立ててハワイに帰りたがって
騒いでいることがわかって、後日、無事にハワイに返還されたというものです。
ハワイの真珠湾では日本軍によって撃沈された戦艦アリゾナ号が、記念館(慰霊施設)
になっています。
現地を訪れれば、それは大きな墓場だということが、少し感受性のある者にはすぐわか
ります。多くの霊場同様、そこはひんやりとした霊気が漂い、いまもなお死者たち、その
遺骨が何かを語りかけているのです。
天皇家の立場に立った戦後処理
日本の戦後処理が問題になるとき、上皇上皇后両陛下がずっと慰霊の旅を続けてきたこ
とは、よく知られています。
天皇の勤めは、古来、神に豊作を祈願し、国土の安泰と人々の幸福を祈るための祭祀を
司ることです。
天皇が国民のため、神や祖先を祭るのは、自然の恵み、環境のありがたさを感謝し、祖
先への思いと慰霊鎮魂の祈り、要は供養が足りないと、世の中に様々な不都合が生じてく
ることを知っているからです。
しかし、物質文明の隆盛、宗教界の堕落が問題とされる中で、天皇の祈りも危機の時代
を迎えて久しいことは、近年の皇室周辺のできごとを見ればわかるはずです。
それは、なお祈りが足りない、先祖供養が足りない結果ですが、天皇といえども思いど
おりに振る舞えない世の中とあって、その意味では皇室も被害者ということです。
全国遺族会をはじめ、遺骨収集を続ける団体など、戦後処理を行ってきた組織は、たく
さんあります。
その中で「良いこと」をテーマにする「ウエルネス@タイムス」が、深い関わりを持っ
ているのが、天皇家に代わって、戦後処理を担ってきた「梨本宮記念財団」(梨本隆夫代
表理事)です。
2009年6月に設立された、同財団の原点は「世界平和」です。
1949年12月8日、梨本代表理事の実父・神林茂丸師は、私財を投げ打って、出羽
三山・羽黒山境内に世界平和塔を建立しています。
塔の上の球は地球を意味して、タテとヨコの線は日本と外国の人が手をつなぐ平和を象
徴しているということです。球の上には3本足の霊鳥(八咫烏)が翼を広げています。
2002年9月、梨本代表理事が梨本家に入籍したのも、実父と梨本徳彦王との会話の
中で、梨本宮の名跡をどう継承していくかが問題になったとき、宮家と平和事業継承のた
め、覚悟を迫られてのことです。
「財団の目的は、天皇家の立場に立った過去の因縁解消と戦後処理です。さらに、戦後日
本の復活の『礎』となった戦争戦没者の慰霊も重要な柱です。併せてアジア近隣諸国、特
に日韓、日中の友交親善にも努めて参ります」
こう2015年春、代表理事は「戦後七十年に想うこと、軌跡」(祈りの旅)と題した
小冊子に記しています。
戦没者たちの声を聞く
あらゆる人間関係は、一般的にいわゆる愛をベースにした不思議な縁の賜物です。
「ウエルネス@タイムス」記者が、初めて梨本代表理事と会ったのは、2005年の春、
秩父・今宮神社の前宮司の紹介です。今宮神社は民間にありながら、天皇家の神「宮中八
神」を祀る不思議な存在の神社として知られています。
当時は先代の梨本徳彦王が生きていて、記者が縁あって彼を助けたこともあります。
現・代表理事には旧皇族を引き継いだ立場の者として、日本の上層階級に関する霊的な
関心から、記者の顧問役霊能者を紹介したこともあります。
もちろん、30年以上続ける代表理事の活動のすべてを見てきたわけではありません。
しかし、およそ17年間、3回の出羽三山行きを含めて、身近に見てきた代表理事の在り
方は、並大抵の努力、修行、精神力では不可能だということです。
ジャーナリストとして、天皇家周辺、宮内庁をはじめ、英霊を語る多くの右翼、保守層
が、表舞台では威勢のいいことを言いながら、実に薄っぺらで、真に国益に適うとは思え
ない言動に終始するのを目の当たりにしてきただけに、30数年、愚直とも言える頑固さ
で出羽三山の他、毎月15日の靖国神社参拝、23日の白川伯王家墓前での祭典を続ける
姿は、自ら自覚する「お役目」とはいえ、鬼気せまる厳しさがあります。
その他「近年、当財団が使命感をもって活動してきたことは、アジア各国・各地の慰霊
の旅でした。沖縄をはじめ旧満州、フィリピン、グアム、パプアニューギニアなど劇戦地
に赴き、哀悼のまことを捧げ、決してこの悲劇を忘れないと、感謝と平和の誓いを重ねて
参りました」と、活動報告にある通りです。
激戦地に、いまも残るその痕跡を前に、彼もまた戦没者たちの声を耳にしています。
彼らは「国を護るため」「国の未来を託す」「家族の健やかな幸せ・・」という最後の
言葉とともに、当たり前の平和を願って、尊い命を散らしたのです。
「梨本宮記念財団」の真実
あらゆる激戦地を訪れ、多くの慰霊鎮魂、戦後処理を続ける梨本代表理事の姿は、一人
の日本人として、頭が下がると同時に、彼が一部の勢力から煙たがられるのもよくわかり
ます。
理由はベンチャーの世界、研究者の世界でも、画期的なことであればあるほど、叩かれ
足を引っ張られるのと似ています。自分がやっていないこと、自分ができないことをやる
人間に対する嫉妬と同時に、既得権益を脅かす邪魔な存在だからです。
戦後処理に、そうした事情が働くのもおかしなものとはいえ、ビジネス的に見れば、旧
皇族は一つのブランドです。
とはいえ、毎月の靖国参拝、白川伯王家墓前での祭典だけでも30年以上続けるのは、
至難の技です。靖国参拝の後は目黒祐天寺にお参りすることが、恒例になっています。
目黒祐天寺には北朝鮮に返還できないままの軍人・軍属の遺骨が納められたままになっ
ています。
その目黒佑天寺には、大正天皇の生母・柳原愛子之墓があり、荒れ果てたままだった墓
所をきれいにしたのも、代表理事の仕事です。
明治天皇の信任厚かった児玉源太郎元帥の墓がある多摩霊園。あるいは、フィリピンで
銃殺刑に処された本間雅晴中将の遺骨の問題など、やるべきことは山積しています。
それも夢枕に彼らが立って「何とかしてほしい」というので、呼ばれて墓の掃除と慰霊
鎮魂に出かけているというのです。
2016年1月には天皇皇后両陛下(当時)がフィリピンの無名戦士の墓を訪れて、戦
没者に祈りを捧げていますが、代表理事は天皇皇后両陛下が行けないゲリラが出没する奥
地に、機関銃を手にした国軍兵士に守られながら、陸軍墓地、海軍墓地の慰霊鎮魂の旅を
続けてきています。
バチカンとの関わりでは、ローマ教皇の来日前の2018年9月、エストニアで行われ
たローマ教皇のミサに参列し、晩餐会に出席してきています。
その前にはインドの聖地を訪れています。
それらすべてを「お役目」と受け止め、覚悟して事に臨んでいるということです。
キリスト教と仏教の聖地の実態を目にした彼は、すでにその役目が終わったことを知っ
て「日本の神道・古神道こそが、世界を救う」との確信を深めて帰ってきています。
直会の席で起こった大騒動
次なる大きな仕事として、コロナ前、これまで何度も足を運んだ激戦地フィリピンに行
く予定になっていました。
ドゥテルテ大統領からの招請状が来ていて、現地では高齢のマルコス前大統領夫人とも
会うことになっていたということです。
そのフィリピン行きが、コロナ禍により、いわば足止めを食った形で、2年以上が過ぎ
ています。
一時期、フィリピン行きが解禁という状況になって、急遽ワクチンを接種したところ、
体調を崩したこともあったようです。
フィリピン行きが現実味を帯びてきた2022年2月23日、白川伯王家墓前での祭典
を無事行って「さあ、これから」と意気込んでいました。
それから、わずか1週間後、連絡が途絶えてしまいました。
コロナに陽性のため入院という説明があったようですが、実際は3回目のワクチンを打
って体調を崩したということです。
同財団の心配のタネはコロナ・ワクチン以外にも、2021年12月15日、毎月恒例
の靖国神社参拝の日に起きています。
参拝後の直会の席で、ある財団理事の昔を知る女性経営者が「何で、あんな人物がここ
にいるの」と囁いたことから、大騒動になったのです。
長い人生を生きてくれば、人に知られたくないことの一つや二つあって当たり前です。
問題はそのことが、人としてなすべきことの障害になるかどうかです。
コロナに振り回された梨本宮記念財団は、発足以来、最大の危機、試練に晒されていま
す。梨本代表理事の健康を含めて、続きは別の機会に改めてレポートしたいと考えていま
す。
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