「酸素」と「酸性」のちがいを知らない専門家?
一口知識 酸素補給水「WOX」を開発したメディサイエンス・エスポアの苦労
赤い「WOX」の幟
2022年10月12日から14日にかけて、パシフィコ横浜で開催されている「バイ オジャパン2022」(ヘルステック2022)に行ってきました。
「メディサイエンス・エスポア株式会社」の松本社長が「今年は特に力を入れている」と 話していたためです。
入り口でもらったガイドブックを開くと、表紙は英語。表紙下のスボンサーに神奈川県 や三井不動産などの日本語が見られるだけです。
さすが「バイオビジネスにおけるアジア最大級のパートナリングイベント」と銘打って いるだけのことはあります。国際関係では英語が標準語です。コロナの影響もあって、本 来はもっと海外からの企業・研究機関関係者の訪問を期待しているのかもしれません。
その点「過去最大規模で開催。世界各地から最先端のバイオ技術が集結」というのが売 りではあっても、外国人の姿があまりないのが、残念なところでしょうか。
会場は再生医療、バイオ関係、健康関連の大きく3コーナーに分けられていて、まさに 最先端のバイオ、健康・医療技術が展示されています。
そんな中、メディサイエンス・エスポアのブースでも、今年は酸素補給水「WOX」が 米国・中国・日本での物質特許が取れたこともあり、例年にない力の入れ具合です。
それを象徴するように、メディサイエンス・エスポアのコーナーには両サイドにこの手 の学術的なイベントではあまり見かけないWOXの赤い色の幟が立っています。
学術的なイメージを損なうような展示は好ましくないとされ、無難な展示が多い中、か なり斬新なチャレンジです。
酸素飲料の残念な実態
「WOX」をはじめ「HTシルバー」などを展開するメディサイエンス・エスポアの事業 展開は、物質特許一つとっても、常にチャレンジを強いられることになります。
扱う商品が酸素補給水ですから、できてしまえば簡単なようですが、実は酸素には大き な誤解があります。そのため研究開発はさておき、事業化に関しては苦労が絶えません。
健康ブームの中、酸素カプセルや高濃度酸素水などが今でもありますが、これまでも様 々な酸素セラピーや酸素飲料、サプリメントが登場しては消えています。
消えていく理由は、例えばかつて酸素水がブームになったとき、酸素をナノバブル化す ることによって、吸収しやすくしたというのですが、海外での実験 で「飲んでも血中の酸素濃度は期待どおりには上昇しない」との結果が出て、ブームは終 息しています。
高濃度酸素水やナノバブル酸素水など、いまでも酸素水は売られています。
酸素補給水「WOX」も、そうした類似商品の一つと見ている専門家も少なくありませ ん。酸素に詳しい健康ジャーナリストが「WOX」の説明を聞いて「酸素水はアメリカで 効果ナシだと問題になっていましたよ」と言っていたこともあります。
「WOXは世界で初めて酸素を水に溶け込ませることに成功した」と言っても、なかなか 信じてもらえないのも、残念な酸素飲料の歴史があるためです。
酸素と酸性はちがう!
多くの誤解に取り囲まれている酸素そしてWOXですが、誤解の最たるものは、日本語 の酸素と酸性という漢字から来ています。
なにしろ、医学関係の学会などで、堂々と「酸素は吸いすぎると体が酸性になる」と語 る重鎮がいたり「酸素水は歯のエナメル質を溶かす」と信じている学会トップもいるとい う世界です。 「ビックリしたのが、深呼吸をすると、オゾンが体内に入って、体に害を及ぼすと、大学 病院の医師が発言していたことです」と、松本社長は嘆いていました。
メディサイエンス・エスポアの苦労がわかります。
「みなさん酸素の酸と酸性の酸を間違えているんです。日本語だと、同じ酸なんですけど 英語では酸素はOxygen、酸性はAcidityと使い分けています。日本人は誤解 していますけど、歯は酸で溶けても、酸素では溶けないですよ」
事実、クエン酸は酸っぱくても、アミノ酸は酸っぱくありません。
体に有害なものとして、目の敵にされてきた活性酸素も、現在ではその有益性を示す多 くの実験データや論文が発表されるなど、大きく評価が変わっています。
厚生労働省も活性酸素が心血管疾患、生活習慣病などの要因となることに関して「活性 酸素の産生が過剰になり、抗酸化防御機構のバランスが崩れることが問題であって、活性 酸素を除去すれば良いという安易な考え方は禁物」と指摘しています。
かつてコレステロールが成人病の要因の一つとされてきましたが、今ではある程度のコ レステロールは健康の維持に不可欠なものとされているようなものです。
活性酸素のデメリットを解消する酸素?
活性酸素はわれわれ人間のエネルギー代謝を行う過程で、必ず発生します。そこでの活 性酸素は「酸化ストレス」と呼ばれる生体損傷をもたらすことにより、迷惑な物質として 目の敵にされてきました。事実、活性酸素が動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病、老化の 原因になるということも証明されています。
そのため、単純に活性酸素は悪であり、毒だとして、一時期SOD(スーパーオキシド ディスムターゼ)酵素・食品・アプリがブームになったこともありました。
単純に活性酸素を悪者にして、抗酸化物質によって還元すればいいといった話が一人歩 きするなど、どうもおかしなことになっているというのが、酸素、特に活性酸素を巡って の状況です。
しかし、SODも酵素の一種ですが、われわれ人間には活性酸素を無害化する抗酸化酵 素があり、通常はうまい具合に共存していて、デメリットとメリットが理想的なバラン スで保たれているのです。
活性酸素が問題になるのは、細胞内の酵素があっても、細胞組織が元気でなくては、肝 心の酵素がつくれず、うまく働きません。その細胞を元気にするためには、十分な酸 素が必要なのです。
要は、酸素がないと活性酸素が必要以上に発生すること。細胞が元気で活性酸素のデメ リットを解消する酵素が正常につくられていれば、活性酸素はメリットとされる働きとデ メリットとされる働きのバランスが保たれて、問題とはされないということです。
「毒もクスリ」と言われます。活性酸素が悪いわけではありません。不健康な体、細胞が 活性酸素を怖いものにしているのです。
事実、科学誌の「ネイチャー」や「サイエンス」などでも「活性酸素は悪者か?」とい った記事や論文が掲載されるようになり、抗酸化物質(SOD)の過剰摂取が問題にされ る一方、マウスや線虫など、様々な実験で活性酸素がないと、逆に早死にすることがわか って、今では活性酸素は大事だということになっているわけです。
ストレスがないと、かえってカゼを引きやすくなるようなものです。
活性酸素がやたら悪者にされてきたように、われわれ特に日本人は酸素を知りません。
それが素人だけならさておき、専門家でさえ誤解しているところに、ベンチャー企業と してのメディサイエンス・エスポアの苦労があったのです。
野口英世の言葉と創業の精神
振り返れば「メディサイエンス・エスポア」は2024年6月、創業20周年を迎えま す。酸素補給水「WOX」で華々しく登場したベンチャー企業のイメージが強いだけに、 意外な事実に思われます。
松本社長自身、まさか、これほどの時間がかかるとは思っていなかったようで「パッと しないでしょ。協和発酵工業やパスツール時代を知る連中からは、何をしているんだ!と 呆れられてます」と苦笑するしかないようです。
とはいえ、ボヤいてばかりはいられません。 松本社長にとっては、突然の起業でしたが、パスツールで研究開発をしていたころの思 いは、やりがいのある仕事だったとはいえ、ワクチン開発、感染症の予防だけでは、なぜ かもの足りないと考えるようになっていたということです。
もっと根源的なところから、病気を防ぐことはできないのか。そこで「すべての病気の 原因は酸素欠乏症である」との野口英世博士の言葉をヒントに酸素に着目「およそ百年前 に立てられた仮説が正しいことが証明されつつある現在、酸素不足をなくし、酸素欠乏症 を改善する方法さえ発見できれば、たくさんの人を病気の苦しみから救い出すことができ るわけです。そこで、いかにして酸素を利用できる形にし、健康に役立てられるか、それ がライフワークになりました」と、創業当時の心情を語っています。
20年近い時間がかかっているのは、酸素そのもののすべてが解明されていない中で、 世界で初めての酸素を溶け込ませた水(WOX)を実現したこと。肝心の専門家が酸素と 酸性のちがいを理解していないといった逆風に晒されてきたためです。
同時に、時間はかかったとはいえ、確実に言えることは、酸素が生存にも健康にも必要 不可欠だということが、ようやく理解されているということです。
新型コロナ感染症が酸素の重要性を、世界に再認識させたこともあります。
日本臨床栄養学会総会
メディサイエンス・エスポアは、もともと研究開発型企業として、研究仲間六人で立ち 上げています。
特に「WOX」は、それぞれの専門サイエンスドクターが、松本社長を中心に、医学か ら歯学・薬学・獣医学・看護学・保健学・農芸化学・工学・理学・スポーツ学等、各分野 のエキスパート16名で「チームWOX」を結成し、技術開発に当たってきた他、研究者 以外にも、外部アドバイザーを積極的に活用し、健康・美容・スポーツ等、様々な分野で QOL(生活の質)を高めていくプロジェクトを推進しています。 酸素の啓蒙のための「健康酸素マスター」講習会並びに一般財団法人QOLサポート研 究会を定期的に開催しているのも、研究開発型ベンチャー企業の使命であり、チャレンジ なのです。
各学会への参加、研究論文発表なども積極的に行っていて、2022年10月7日~9 日には、岩手県盛岡市で「未来を切り拓く臨床栄養学」というテーマを掲げた「第44回 日本臨床栄養学会総会」で、松本社長が「慢性閉塞性肺疾患(COPD)症状と酸素補給 水(WOXR)の飲用効果」について発表しています。
COPDは肺の生活習慣病とも言われる疾患で、最大の原因は喫煙だとされています。 治療法として「禁煙」が推奨されているぐらいで、決定的な治療法がありません。
発表内容は、以下の通りです。
〔緒言〕COPDはタバコの煙など有害物質の長期吸入暴露により生じる肺の炎症疾患で 生命を脅かし完治は難しいとされる。 〔目的〕2011年開発、2021年米国・中国の物質特許取得したWOXのCOPD 患者や息苦しさがある人の症状改善効果を検討した。
〔対象と方法〕個人保護法に基づき了解を得た成人。
試験1:在宅酸素療法を行う76歳男性COPD患者。WOXを200~500ml/ 日を30日間検討した後、本人からSpO2測定記録、病気経過、症状記録の提出を受け た。
試験2:息苦しさがある被験者17名を、飲用期間で2群に分けた。1群は8名で2週 間、2群は9名で4週間検討した。飲用は125~250ml/日で、起床時と就寝時と し、IPGA呼吸症状の質問票で試験前検査、「COPDアセスメントテスト(CAT) で検討した。
〔結果〕試験1:10日後に体質改善、酸素ボンベなしの生活になり、ゴルフを楽しめる。
試験2:1群では8例中6例が改善し、2群では9例中8例で改善した。
〔結論〕WOXは呼吸機能障害者に役立つ。更に包括的呼吸リハビリテーションシステム での効果を検討したい。
以上、タバコの煙等により生じた肺の炎症疾患のため、呼吸困難を感じる成人に対して WOXを飲むことで、消化器官を通して酸素補給ができることから、呼吸機能障害の改善 に大きく寄与しているということを証明したものです。
これはWOXに関する研究成果の、ホンの一例です。
今後とも、様々な方面での研究成果発表が期待されています。
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