フォトギャラリー 全員が酒造りに参加する島根県安来市「青砥酒造」を訪ねる
「いい水」が決め手の蔵元で使用される「量子水」

2024年12月、日本酒がユネスコの無形文化遺産に登録されました。
和食の無形文化遺産登録とともに海外ではSAKEブームが起きています。一方、日本酒の生産量は1973年をピークに減少の一途をたどって、ブームとはほど遠い現実があります。
以前、親戚が酒屋をやっていた関係で、新潟・樋木酒造の「鶴の友」を紹介されたことがありました。そのとき、うまい酒の条件を聞かされて「なるほど」と思ったものです。
一般的に美味しい酒の3要素は、1に水、2に米、3に杜氏です。実は、この3つに加えてもう一つの条件があると言って、それが「経営者の人柄だ」と教えられました。
確かに、お酒に限らず、あらゆる製造業・ビジネスのエッセンスは経営者の人柄です。
そんなことを考えながら、酒造りのもっとも忙しい12月半ば、島根県安来市の「青砥酒造」の青砥幹彦社長を訪ねました。環境関連商品を扱う「山陰ネッカリッチ」の白根信彦社長から「一度訪ねてみては」と言われていたためです。
もともと青砥酒造は山紫水明の地にある酒造会社であり、いい水を使っていますが、白根社長から、その水をさらに良くする装置「νG7量子水」(株式会社ウエルネス)があると聞いて、使い始めたということです。
「青砥酒造」の創業は1895年(明治28年)です。1954年に生まれた青砥幹彦社長は、3代目の父親を早くに失い、祖父も亡くなった20代後半、若くして4代目を継いでいます。
日本酒の置かれた厳しい状況下、青砥社長は酒造りを杜氏から学び、簿記関係を手探りで学びながら「日本酒のこだわりの搾りかた」と「日本酒が生まれ持った個性」を大切に新しい時代の酒造りに取り組んでいます。
12年前には昔ながらの手造りの製法に原点回帰し、すべてのお酒を「雫取り」と「木槽(ふね)搾り」に切り替えました。雫取りとはもろみを布の袋に詰め、そこから自然にしたたり落ちる雫だけを集める搾り方。木槽搾りはもろみを入れた酒袋を積み重ね、上から圧力をかける搾り方です。一般的な機械による搾り方に比べて、搾り方が弱く、雑味が少ない香り高い酒質になります。
そうしてできたのが「蒼斗七星」シリーズです。名前の由来は、仕込みの際、仕込み水で満たされた蒼いタンクの中に散らばる掛け麹が夜空に浮かぶ無数の星のように見えることからの命名です。
酒造りとともに経営面でも、職人による酒造りを誰でもできるようにデータ化し、簿記関係も同様にシステム化を進めて、同社の酒造りは男性の蔵人から事務の女子社員、パート従業員まで全員が酒蔵に入るそうです。結果、週休二日制を実現しています。
言葉にすれば簡単ですが、その持つ意味と難しさは、同社の酒造りの考え方「酒造りは人造り」ということです。
そんな青砥酒造の取り組みが、大手商社の目に止まり、地方の酒蔵とは思えない販路の広がりが生まれています。通販のベルーナが扱う日本酒の一角を占め、自然食品のムソーが販売に力を入れている伝統海塩「海の精」を用いた料理酒、酒粕入りチョコレートなどの展開です。
酒造りに関して「やわらかい酒をつくりたい」という青砥社長は「どこが完成かわからない」と語りつつ、さらなる高みを目指しています。その「やわらかさ」に量子水が役立っているようで、肌触りの良さとともに「発酵にも何らかの影響が出ているのは間違いないと思います」と話していました。
経営者として、伝統と新しい展開、全員参加の酒造りなど、こだわりの質と企業経営面での量のバランスなど難しい時代の舵取りを見聞きすると、まさに知られざる優良酒蔵の取り組みと、人気の銘酒だとわかります。
日本には、まだまだ知られざる蔵元があるとの認識を新たにしました。
掲載写真について
青砥酒造本社には、代表銘柄「ほろ酔い」の看板がかかっています。
いつも品切れの酒粕入りチョコレートは、木槽搾りの酒粕が、機械で搾ってできる板粕に比べて、お酒がたっぷりで柔らかくなります。要は、本来は売り物になるお酒がたっぷり残っています。いかにももったいないため「何か利用法はないか?」というところからできたのが、板粕ではできない酒粕入りチョコレートです。
いまではホワイトチョコ、抹茶チョコと種類が増えています。それこそ、人気があっての展開ですが、つくるのはあくまで従業員たちです。「いくら売れるからといっても、自分たちでやらなければ意味がない」というのが、同社のスタンスです。
もちろん、酒粕自体が人気で、小分けしてこだわりのスーパーなどで売られています。
手が空けば、杜氏もビン詰め、配送などの作業に携わります。
全員でやれば「自分たちが美味しいと思えなければ、お客さんへの対応やビン詰め作業もやる気が出ない」、「特にウチの場合、いい酒はビン詰めしたものを冷水の入った大きなプールにつけて冷やすんです。それ、全員でやってますけど、もし不味いと思ったら、そんなひと手間、やったってしょうがないということになる」と聞けば、なるほどと納得できます。
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