世界にもっとも欠けていて、もっとも必要とされているもの
「日本的霊性」と現代社会について ウエルネス情報
霊性と現代社会
「霊長類」とは人間を含めたサルの仲間の総称です。その「霊長」とは不思議な力を持つ
最も優れたもののことであり、万物の霊長とは人間のことです。
あるいは、われわれ人間は「ホモ・サピエンス」と呼ばれます。現生人類が属する種の
学名であり、ラテン語で「賢い人」を意味します。
「万物の霊長」も「ホモ・サピエンス」も、ただのレッテルと化した結果、常に戦争が絶
えず、持続可能性が問われる世界や地球の現状があります。
「そんなことでいいのか」と思うのは「ウエルネス@タイムス」だけではありません。
というのも、コロナ下の2022年、国立オリンピック記念青少年総合センターで開催
されたイベント「霊性と現代社会2022(コロナを越えて〜その先に見えるもの)」で
も様々な指摘がなされていたためです。
「ウエルネス@タイムス」第12号のレポート「安倍元首相の死で語られないこと」の冒
頭で、簡単に触れています。
イベントを主催した「現代ウエルネス研究会」代表の濁川孝志・立教大学名誉教授によ
れば、イベントは「多くの問題を抱えた世界は、いまロシアと中国、アメリカを中心とし
た西側諸国がそれぞれの主張・権益を掲げて、まるでかつての大航海時代のような様相を
呈している。この羅針盤なき21世紀をどう生きていくか」をテーマにしたものです。
そこに「霊性」を掲げているのは、現代社会を考えるとき、キーワードになるのが霊性
という言葉だからです。
日本的霊性と現代社会
改めて指摘するならば「霊」とは、通常はかり知ることができない不可思議な働きがあ
るもの、肉体を離れた人間の精神的本体、魂です。
「霊性(スピリチュアリティ)」について、濁川教授は「本来、万教同根であるはずの宗
教がもつ共通要素」としています。
要は「多くの宗教が説明している宇宙の成り立ち、超越的存在(神)との繋がり、生き
る上での規範などの共通部分のエッセンス」です。
同時に「宗教が持つ負の側面を取り除いたもの」として、霊性とは人間が普遍的にもつ
人間存在の意味や価値を問う行為や人知を超えた大いなる存在を認識し、それに対し畏敬
の念を抱くことなど、人間ならではの深遠な特質と捉えることができると語っています。
スピリチュアルな世界で、一神教に顕著な宗教が持つ負の側面と無縁なことが「霊性」
を考える上での重要な分岐点となります。そこでは「霊性」とは、ほとんど日本のことの
ように思えてきます。
事実『日本的霊性』(岩波文庫)を書いた仏教学者・鈴木大拙は、霊性を真の日本人の
宗教意識としています。
霊と肉がついに交わることがない西洋世界に対して、日本では霊性の意義を精神(心)
または物(物質)に対峙させた考え方の中では、矛盾・闘争・相克・相殺などが免れない
として、二元的世界を超越することを求めています。
要は「二つのものがひっきょうずるに二つでなくて一つであり、また一つであってその
まま二つであるということを見るものがなくてはならぬ。これが霊性である」として「今
までの二元的世界が、相克し相殺しないで、互譲し交歓し相即相入するようになるのは、
人間霊性の覚醒にまつよりほかはない」と断言しています。
鈴木大拙師が世界を旅しつつ論じてきた霊性は、いまもそのまま通用します。
社会の分断、差別、戦争など、あらゆる対立から来る問題は、まさに霊性の覚醒・向上
なくして解決はないということです。
そして、そこにこそ日本の役割があります。
日本的霊性と現実の世界
霊性と現代社会をテーマにした同イベントで、登壇者が「世界平和への思い」を語り、
そのためには「日本が中心にならなければならない」と公然と主張するのも、霊性の覚醒
・向上が不可欠だからです。
同イベントは第一部が、それぞれスピリチュアルな世界では有名な元・国連職員の萩原
孝一氏、縄文時代や古代文明に詳しい育生会横浜病院の長堀優院長、胎内記憶による生ま
れ変わり等の事例を発表している池川クリニックの池川明院長、スペシャルゲストとして
『人は死なない』の著者である東京大学・矢作直樹名誉教授の講演、第二部がシンポジウ
ム、そして第三部が和太鼓セラピー「響沁浴」を展開している和太鼓千代組の千代園剛代
表のパフォーマンスという内容です。
47歳のときに、突然、謎の声が聞こえてきて、スピリチュアルに目覚めたという萩原
氏は、どこまでが冗談かわからないような話術を交えつつ、あの世をかいま見てきた話を
したり、愛について語っています。シンポジウムでは国連職員として世界を見てきた結論
でもある日本人が世界に果たすべき役割を、熱く論じています。
2人目の長堀氏は「奇跡のりんご」の木村秋則氏との交遊の他、法華経のエッセンスを
交えつつ、いときょう氏(「ホツマ出版」社長)との共著『ホツマツタヱによる古代史の
解釈』(青林堂)を紹介。五七調の長歌体できている神代文字による古代歴史書「ホツマ
ツタヱ」の今日的な意義を説いています。縄文に限らず、日本には世界最古の文明、伝統
文化があることから、何かと騒がしい今日、日本人として「しっかり心を落ちつける」こ
との必要性を問いかけています。
3人目の池川氏は、胎内記憶、胎内教育の研究成果として、生まれる前の記憶を持って
いる子どもの伝える様々な事実を紹介。宇宙のできるときの記憶から、宇宙は光の粒でで
きているそうです。しかも、それが愛であり、一粒一粒に意識があるということです。そ
の愛が「仲間にならない?」という呼びかけで集まって魂になるそうです。つまり、愛の
粒子で宇宙はできており、人間も同じ愛でできていると言います。信じる信じないは人そ
れぞれですが、せちがらい時代にほのぼのとする話です。
ちなみに「選民思想と炎上しそうですが」と前置きして、生まれてくる子どもたちに、
一番人気は「日本で生まれること」だそうです。
ゲストの矢作氏は、用意してきたスライドに基づく話ではなく、3人の話を受けて霊性
とともに、政治について語っています。特に、中曾根政権の構造改革、小泉政権の郵政民
営化で何百兆円という日本の資産が外国勢力に渡ったと明かしています。それは今日の兵
器やワクチンも同様で、競争力に劣り、争いが苦手なお人好しの日本は欧米勢力の餌食に
されているという国際的な構図の中で、諸外国に比べて、まったく所得が上がらない生活
を強いられています。
「それで海外の人が、意識の進化を遂げ、成長してくれればいいですけど、実際はそうは
なりません。結局のところ、本来、現実社会の中ですべきことを日本人が怠ってきたため
です」との矢作氏の指摘は、政治家のみならず、それを許してきたわれわれ自身の責任で
もあります。意識の進化とは霊性を高めるということです。
シンポジウムでは戦後、アメリカとの同盟関係の核心に触れる際どい話もしています。
天皇にまつわる話、金融の話など、さすがに活字にするのははばかれます。
ロシア・ウクライナ戦争と日本
イベント全体を通じた印象は、霊性というキーワードをもとに、現代社会、世界を見回
せば、西洋世界も中国、ロシア等の大国にも、霊性の時代を生きる資格はないという結論
になります。そして、唯一の希望こそが日本というわけです。
もっとも、その日本もすっかり西洋化の渦に飲み込まれた観もありますが、それでもな
お古来から日本社会にある霊性の断片は至るところに見受けられます。
3・11東日本大震災時の光景は、世界に感動を与えました。サッカーのワールドカッ
プでは、日本人サポーターが勝っても負けても、ゴミを集めて、席をきれいにしていく映
像が話題になっています。
海外からの玄関口である成田国際空港、羽田空港の床やトイレ、新幹線などのゴミのな
い光景は日本人には当たり前でも、およそ海外では考えられないことです。
一方で、現代社会の諸問題を考えたとき「霊性」が現代を理解する重要なキーワードで
あるのは、世界に目を向けてみれば一目瞭然です。日本では戦後78年目を迎えて、戦争
のない平和な時代が続いていますが、世界の現実は異なるからです。
ロシアとウクライナの戦争を、われわれは映像その他ニュースでゲームのように見てい
ますが、戦争の原因・背景は複雑です。問題はおよそ平和な日本では考えられないような
ことが、21世紀の今日、かつては一つだったこともある同胞同士が当たり前に殺し合い
をしていることです。
なぜ、そんなことができるのかは、一言で言えば「霊性」の欠如。万物の霊長と言われ
る人間の本分から、限りなく逸脱している結果というしかありません。
それ以外に、本来の同胞、同民族が殺し合う理由などないからです。
ウクライナは武器で平和を実現しようとしていますが、武器で平和は実現することはあ
りません。次の新たな戦争を用意するだけのことです。それでも、武器、戦争にこだわる
のは、目の前の現実しか見ないためです。
そこにあるのは、霊性の欠如だとわかれば、残念ながら、ただ相手の霊性の覚醒・向上
を待つしか方法はありません。霊性に立ち返れば、平和を実現するための殺戮が、どんな
にバカげたことか、よくわかるはずだからです。
2022年のイベント「霊性と現代社会」は、そのことを考える重要な機会となってい
ます。
西洋文明と一神教の限界
霊性の欠如は、ロシア・ウクライナ戦争に限ったことではありません。
「霊性」を率先して説き、世界に示すべき宗教界が、霊性とはほど遠い状況にあります。
例えばカトリックの総本山バチカンも似たようなもので、ローマ教皇は機関銃を持った親
衛隊に守られて行動の自由を得ているのが現状です。
テロが絶えないイスラム国家のみならず、2023年1月27日、ホロコースト追悼記
念日にエルサレム北部のシナゴーグ(ユダヤ教会堂)で銃撃があり、7人が死亡したと、
ニュースになっています。
銃撃したのはパレスチナ人で死傷者はユダヤ人ということですが、相変わらずイスラエ
ル・パレスチナ双方による暴力の応酬が続いていて、治まる気配はありません。
日本ではおよそ考えられない文明の限界が透けて見えます。
それもいまに始まったことではありません。
1970年に設立された世界宗教者平和会議は「諸宗教間の対話と相互理解から生まれ
る英知を結集し、平和のための宗教協力を行う」NGO(非政府組織)です。記念すべき
第1回が日本で開催され、2019年に第10回世界大会が開催されています。
以前、同会議に出席した天台宗僧侶が講演で話していたことがあります。
「歴史的に宗教戦争を繰り返してきたキリスト教世界と、いまも聖戦(ジハード)と称し
て、テロと殺戮が絶えない中東イスラム世界など、いわゆる一神教団体は『対話と相互理
解』を掲げても、結局は他宗教を敵と見なして争いを続けている。日本では神道も仏教も
基本的に対立することはない。みなさん、いつまで争っているのですか」と、霊性の欠如
を指摘していました。
事実、日本では明治維新前は神仏習合が当たり前で、あらゆる宗教と共存して、古くか
ら和の伝統文化と平和が実現しているわけです。その名残はいまも多くの神社仏閣に見て
取ることができます。
自虐史観と教育
西洋が植えつけた戦後日本のいわゆる自虐史観を、本来の日本の歴史とは異なると、同
イベントの登壇者のみならず、多くの論客が証拠を揃えて論じています。にもかかわらず
すっかり洗脳状態にある大半の日本人の頭には入って行かないといった印象があります。
近年の日本に対して、アメリカを筆頭に西洋世界がやってきたことは何でしょうか?
一例を上げれば、終戦後のアメリカによる「War Guilt Informati
on Program(WGIP)」で、二度と日本が彼らに立ち向かうことがないよう
に、戦争についての贖罪意識を植えつけたことです。
あるいは、現在の日本に対して、隣国である中国や韓国がやっていることは何でしょう
か?
どのような過去があったにしろ、いまも国家による「反日」教育・政策が堂々と推進さ
れています。日本ではおよそ考えられないことです。
日本は縄文の1万年以上続いた時代に、戦った痕跡がないという世界にはない平和な時
代を実現しています。そこに日本民族の原点があります。
神話は日本では、ナンセンスな絵空事として、学校教育の場でも語られませんが、真摯
に向き合えば、武器も持たずに日本の国の中心となった天皇は、他国のロイヤルファミリ
ーとはまったく異なる存在だとわかります。
奈良時代末期、天皇から庶民までの歌を集めた「万葉集」が編纂され、平安時代には世
界最古の長編小説「源氏物語」が書かれています。
その日本にも、戦国時代はありますが、その後、260余年の戦争のない江戸時代があ
り、西洋文明の影響を受けた明治以降、日清・日露戦争を経て、太平洋戦争で、終戦を迎
えました。以来、78年の戦争のない時代を実現しています。
和の文化とともに、平和が日本の国の歴史のベースにあるものです。その平和が乱され
るのは、西洋文明の影響を受けたわずか100年足らずのできごとです。ちょっと歴史を
紐解いてみればわかることです。
その点に関しては、別の機会に論ずることにして、素直に世界の歴史を振り返れば、戦
後、日本で教えられてきた内容とは真逆の歴史が見えてきます。
いみじくも、矢作氏がシンポジウムで語っています。現在は日本が同盟国であるアメリ
カをあらゆる面で支え、実質的な51番目の州と化していますが、霊性の観点からは、本
来アメリカが日本の48番目の県になるのが筋だと看破しています。
そのためには、日本のみならず、世界が変わる必要があります。日本および日本人の役
割は大きなものがあります。
そのベースとなる強さは、正しい教育から生まれます。自国の歴史を知ることにより、
国に自信と誇りを持つことができます。そこから使命感が生まれ、強さにつながっていき
ます。
平和の道は遠いとはいえ、それ以外に方法はありません。答えはわかっているのです。
後は、ただやればいいだけのことですが、それをやらずに理屈を捏ねてきたのが、人間の
歴史でもあります。
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