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北朝鮮による拉致被害者事件に欠けている視点  蓮池薫氏×辺真一氏の対談を聞いて

vegita974

北朝鮮による拉致被害者事件に欠けている視点

 蓮池薫氏×辺真一氏の対談を聞いて


 忘れるな拉致、県民集会

 2022年11月15日は、北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさんが新潟市の自宅

付近で拉致されてから45年である。

 45年はあまりにも長い。拉致被害者の蓮池薫氏ら5人が帰国した2002年10月か

らでも20年が経つ。

 だが、いまも拉致問題は、北朝鮮・中国・ロシアと米国・韓国・日本間の緊張が高まる

たびに引き合いに出されてニュースになる。


 11月10日、「新潟日報」メディアシップの日報ホールで「拉致問題解決への道筋探

る」とのテーマで、蓮池薫・新潟産業大学准教授の講演とその後、蓮池氏とコリア・レポ

ートの辺真一編集長との対談が行われた。

 2日後の11月12日には、新潟市の市民芸術文化会館コンサートホールで、拉致被害

者の帰国を訴える「忘れるな拉致、県民集会」開催されている。

 地元・新潟では、いまでも横田めぐみさん救出を訴えるポスターがあちこちに貼られ、

集会やイベントの他、いろんな機会に署名やビラ配りなどが行われている。「県民集会」

でも放映された横田めぐみさんをモデルにしたアニメ「めぐみ」を教材に使う学校も多く

あるなど、決して風化はしていない。

 連日のように、拉致関連情報が特集され、記事になり、ニュースになっている。その意

味では忘れることはないのだが、かつての活動の中心的存在だっためぐみさんの父・滋さ

んは2020年6月、87歳で亡くなっている。母・早紀江さんも86歳という高齢であ

る。県民集会ではオンラインでの参加を余儀なくされている。

 拉致家族の置かれた状況は厳しく、どこでもみな新たな展望が描けないままの活動が続

けられている。


 めぐみさんは生きている!

 拉致問題は、いまも風化することはないとはいえ「できることを考えよう」との掛け声

は盛んでも、相手が北朝鮮という難しさもあり、遠くから見ている限りは万策が尽きたと

の印象さえある。

 事実、メディアシップでの蓮池氏と辺編集長の対談のテーマは「解決への道筋探る」と

いうものだが、結論としての提言はなされても、そこには「これまでいくつかのチャンス

があったが、ことごとく実らなかった」という2人の無念のエピソードがついてまわる。

 当日「新潟日報」社長のあいさつに続いて行われた蓮池氏の講演は、表に出ている情報

とはちがって、やはり当事者ならではの内容だと思ったものだが、なぜかその情報があま

り伝わっていない印象があるのが、ちょっと意外であった。

 今回、講演及び対談を聞いて、再確認したことの一つは、拉致被害者の象徴的な人物で

あるめぐみさんの死亡診断書、埋葬記録、さらには入院時期などの明らかなウソという事

実である。

 遺骨に関しては、DNA鑑定で本人のものではないとの報道がなされているが、そもそ

も現地で蓮池さんは同じ住所の2軒先に住んでいたため、当然親しく付き合ってきた。

 北朝鮮側の発表では、彼女の死亡届けは、1993年3月となっていたが、蓮池さん夫

妻が94年3月まで同じ招待所に住んでいたと証言すると、めぐみさんの夫は「錯覚だっ

た」として、死亡日を訂正している。

 しかも、埋葬記録にある火葬場ができたのは、彼女の死後である。「おかしいじゃない

か」と指摘すると「間違っていた」という。入院時期も、当時、蓮池夫妻が元気な横田か

おるさんに会っていというと「記憶ちがいだった」と訂正する。

 一事が万事そんな調子で、とても信じられるような内容ではない。

 なぜそんなバカげたことになるのか。要は一つウソをつくと、次々と辻褄を合わせるた

めにウソを重ねて、収拾がつかなくなるということだろう。

 横田早紀江さんをはじめとした拉致被害家族が「めぐみさんは生きている」と確信して

いるのは、蓮池氏の語る話を知っているからだとわかる。

 拉致問題解決への道筋探る

 講演並びに対談を聞いて再確認したもう一つは、進展のないままの拉致問題に関して、

何度もあった交渉再開のチャンスが結局、生かされなかったという事実である。

 そして、表向きほとんどなす術もないまま、20年以上が経っていることだ。

 イベントは「問題解決への道筋」というテーマだが、二人の結論も「やるべきことはや

って、何をすればいいのか決め手がない」ということだ。

 辺真一氏は東京生まれの在日韓国人として、日本人とは異なる情報源がある。大韓航空

の墜落事故で、いち早く北朝鮮による仕業だと報じ、横田めぐみさんの失踪に関してもい

ち早く北朝鮮による拉致だと報じてきたことから、北朝鮮から敵と見なされ、北朝鮮には

行けなくなった。貴重な北朝鮮拉致問題ウォッチャーの一人である。

 小泉政権時代、北朝鮮側がブッシュ大統領との首脳会談を求めていることから、ブッシ

ュと親しい小泉首相を介して「金正日と会うように」と提言している。そのとき、ブッシ

ュは「会うつもりはない」と断ったのだが、もし小泉首相の進言を受けて、会っていれば

展開は変わっていたのではないか。

 歴史に「もしも」はないとはいえ、そうした残念なタイミングというものも、拉致問題

ではいくつも存在している。

 蓮池氏が残念がっていたのは、超党派での国会議員を派遣して、北との交流を拉致問題

解決の糸口にしようとの提言の行方である。そのときは賛成して「やりましょう!」とい

う話になるのだが、いつもそれ以上の進展はないのだという。

 そんな中でも、例えば以前も検討された「超党派の国会議員の派遣」というカードは、

依然として有効だということであろう。同時に、超党派の国会議員の派遣だけでは、ちょ

っと弱い。何か目玉になるような手土産がいるだろう。


 目黒佑天寺にある北朝鮮軍人・軍属の遺骨 

「ウエルネス@タイムス」記者が、今回、同対談イベントに出かけたのは、長年、天皇家

に代わって中国をはじめ韓国・北朝鮮、フィリピンなどの戦後処理を行ってきた一般財団

法人「梨本宮記念財団」梨本隆夫代表理事から「蓮池薫氏と会う機会があれば、確認した

いことがある」と聞いていたためである。

 代表理事が知っている北の情報と実際に拉致被害者として北を知っている蓮池氏の情報

とを、突き合わせて正確な状況判断ができればとのことであった。

 同時に、長年、拉致問題を見てきて、そこには明らかに欠落している視点があることを

伝えたいためである。つまり、拉致問題の解決のためには、民族間の霊的な問題を無視し

てうまくいくはずがないということ、そのために目黒佑天寺にある北朝鮮軍人・軍属の遺

骨返還を交渉の糸口にすべきだということである。

「ウエルネス@タイムス」でレポートしてきたように、梨本代表理事は安倍元首相に北朝

鮮軍人・軍属の遺骨返還を、北朝鮮との交渉の重要なカードとして使うように伝えてきた

が、受け入れることなく亡くなっている。

 あるいは、10月1日、亡くなったアントニオ猪木・元参議院議員は、北朝鮮出身の力

道山の弟子であったこともあり、北朝鮮とは太い外交ルートを持っていた。拉致被害者の

救出のため、何度も訪朝を繰り返していた。

 その彼にも、目黒佑天寺にある北朝鮮軍人・軍属の遺骨を北朝鮮に返還するようにと伝

えていたのだが、ついに果たすことなく、79歳の生涯を閉じた。

 今回改めて、ジャーナリストとして拉致問題について向き合うことになり、感じること

もまた、なぜ霊的な問題の処理を優先しないまでも、取り組むことを北朝鮮拉致問題の切

り札にしないのかということだ。

 いまだ戦争中の北朝鮮

「ウエルネス@タイムス」記者が北朝鮮に行ったのは、2000年10月に行われた環境

関連の国際会議でのことだが、そのときわかったことの一つは、彼らは「いまだ戦争中」

だということである。

 戦争にも国際法上のルールはあるが、北朝鮮はいわばアウトローだ。何をやっても、何

があっても不思議ではない。そのベースには将軍様がいて、日本の戦時中に共通する食料

不足・貧しさがある。そんな中、日本が戦時中、天皇陛下のために戦ったように、当時の

北朝鮮は将軍様のため、不可能を可能にするべく、敵と戦っていた印象がある。

 そこでは、拉致もまた敵を欺くために必要な手段だったはずであり、戦後の世界を生き

る者とは異なる価値基準があったはずである。だが、拉致の真相は聞いてみないことには

わからない。

 そんな国を動かすには、どうしたらいいのか、実際には政府も関係者も手をこまねいて

いるのが実情であろう。

 打開策は、戦後賠償代わりの大金の提供を別にすれば、これといったものはない。

 その点、北朝鮮軍人・軍属の遺骨返還は、これまでにはない動きである。十分に試して

みる価値はある。

 だが「なるほど」という表情で聞いていた2人の脇で、話の途中、何度も新聞社の担当

者が「もう時間がありませんので」と割り込んできた。

 次の予定があるため、相手は職務に忠実なだけなのだろうが、立場が異なれば「ウエル

ネス@タイムス」はさておき梨本代表理事が、それこそ命懸けで取り組んできた問題も、

貴重な提言も「時間がない」と言って門前払いにされるわけである。

 それでも、本当に北朝鮮問題、拉致問題の解決を図りたいのであれば、霊的な問題を処

理することからスタートするしかないだろう。梨本宮記念財団のやってきたことは、十分

に使えるカードのはずである。


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