大阪発「ウーマン・ドリプラ2022」第13回 大阪・東京大会に行く
大阪のオバちゃんパワーは健在である!
ウーマン・ドリプラって何?
5年ほど前、「ドリーム・プラン・プレゼンテーション(通称ドリプラ=夢の計画の発
表)って、知ってますか?」と、行く先々で聞いたことがある。
答えはみんな「知らない」というものだった。自分もその一人だったので、不思議では
ない。知ったきっかけは新潟大学でのイベントで参加者の一人が「学生ドリプラ」のチラ
シを配っていたこと。大学生のプレゼンター(参加者)を探していたからである。
そのとき、学生向けだけではなく、企業版(社内ドリプラ)や女性版(ウーマン・ドリ
プラ)もあり、もっとも大がかりなものがドリプラの「世界大会」であると知った。
ほとんど知られていないという状況は、5年後の今も変わりはない。
YouTubeをはじめネット上には、様々な動画及び情報が満載という現在、その在
り方にも変化があるのかもしれない。
最近でいえば、クラウドファンディングにその使命を譲っているのではないかという気
がしないでもない。
それはドリプラがもともと著名コンサルタントの福島正伸氏(株式会社アントレプレナ
ーセンター代表)が始めたイベントであり、いわばコンサルの延長線上にあるのに対して
クラウドファンディングはわかりやすい目的(夢)を掲げて、手っとり早くお金が集まる
というあけすけなやり方で、応援する側も小さな満足感を得る。そこにあるのは、クラウ
ドファンディング主催会社(レディフォー、キャンプファイア等)がテレビCMを流せる
ほどのビジネス的な成功。なんだかんだ言って“胴元”が儲けるギャンブル同様のビジネ
スモデルの展開である。
その点、ドリプラのビジネス的な成功は、結局のところそれぞれのプレゼンターに委ね
られる程度で、主催者のメリットは支援者を含めてほとんどボランティアのようなもので
ある。
それも当然で、クラウドファンディング等とは明確な違いもある。
ウーマン・ドリプラの3大テーマ
ウーマン・ドリプラの3大テーマは、1.「自立と創造」、どのような環境におかれて
も自由に夢を磨き、努力によって、それを実現できる。2.「感動・共感」、事業に取り
組む自らの姿勢と社会価値によって、無限の経営資源を集める。3.「相互支援」、違い
を受け入れ、信頼と努力によって、すべての人々に夢と勇気を与えるというものだ。
そこには以下のような前提条件がある。
1.社会的貢献度が高い。
2.独自の価値・魅力がある。
3.事業に発展性がある。
4.実現のための準備ができている。
5.発表者の人生観とリンクしている。
6.人々をワクワクさせること。
結果、クラウドファンディングなどとは異なる人間味豊かな手作り感などもある。
そのスタンスは「夢を持てる大人、夢を語れる大人になる」ということ。その姿を周り
に、子どもたちに見せることができれば、自分の未来も輝くからだ。
大阪会場はリーベルホテルアットUSJ
2022年8月7日午後、第13回ウーマンドリプラが行われると聞いて、会場のリー
ベルホテルアットUSJを訪ねていった。ホテルはユニバーサル・スタジオ・ジャパン駅
の次、終点「桜島」駅前にある。
ホテル2階の会場には、すでに50人ほどが集まっていた。コロナ下、メインはオンラ
イン開催のようだ。
ずいぶん子どもが多いと思ったら、メインのプレゼンなどが終わった後に、子ども版ド
リプラがある
子育て世代のママさんが多いことから、会場には子どもたちの遊び回る姿や歓声、赤ち
ゃんの泣き声がBGMといった雰囲気もある。発表中に、赤ちゃんの泣き声が目立つのも
ウーマンドリプラならである。
大阪会場のプレゼンターは4名。最初が松原由佳さん。占星術、カラフルなエネルギー
カードなどを使って、みんなが軽く楽しく生きられる「みんなでENJOYランド」づく
りがテーマ。表現することが苦手で、人前で話すことなどなかった彼女が変わったことで
生まれた夢というわけである。
2人目の三浦紀子さんは「気付いた時から人は変われる」をテーマに、出会いと気づき
の場所「ニコニコビル」を全国に展開。心・技・体の人生総合案内所にするという大きな
夢を語っている。
3人目は堀内映子さん。昔から親しんできたピアノをベースに、エンターテイメント企
画をテーマに「人々が元気・笑顔になる縁ターテイメントを世界に発信する。プレゼンの
スケジュールは「100才~」まで続く。
4人目は三田村美恵さん。ようやく自分の夢を見つけた彼女が、日本農武士プロジェク
トを計画。未来農業の礎づくりを行うため、2028年に株式会社日本農武士設立。20
38年には国外支援へという夢のストーリーを語る。
シナリオはあるが、実際の舞台に立つと、当日までの努力や苦労、周りの協力など、様
々なことが思い浮かんだりして、予定外の涙がプレゼンターの頬を濡らしたり、聞いてい
る側も、特に彼女たちに協力したメンター(支援者)やコメンテーターなどもまた、涙を
拭ったりするという展開になる。
それもまた、ドリプラには付き物の光景である。
コモレ四谷タワーでの東京大会
9月3日に開催された東京大会の冒頭「大阪のビバリーヒルズから着たアンディです」
と自己紹介したアンディこと中崎佐知子さんは、元気な「大阪のおばちゃん」という印象
である。
彼女ももともとはドリプラのプレゼンターとして、世界大会に出ている。
大阪大会で「輝麗塾プロジェクト2011」をテーマに「美容・健康・癒し」の力によ
って、なりたい自分になることを提案した。その夢を実現させて「輝麗塾」をスタートさ
せた彼女は、ラジオパーソナリティなど、いつくもの仕事を成功させ、大阪発ウーマン・
ドリプラを始めたわけである。
しかも、本家であるドリプラ世界大会が新型コロナ感染のため中止になるのを尻目に、
ウーマン・ドリプラは第13回目を、大阪と東京で開催している。
大阪のおばちゃんパワーの賜物だが、実際に登場するプレゼンターの大半は、当日まで
不安を抱えて「どうしよう、どうしょう」と悩んで、周りのサポートや仲間に背中を押し
出されるようにして、晴れの舞台に登場する。
東京大会の新たなプレゼンターの一人、筆文字と出会ったことで自分を表現できるよう
になった渡部有希子さんは「筆文字で心を開放、大好きな自分に」をテーマに、事業計画
を語る。筆アート展、筆文字ワークショップ、講演会など、いますぐ始められるものの他
「ゆきブランド」の設立、全国に生徒1万人以上という夢の実現を目指す。
2人目の「あるまま生きるプロジェクト代表」のあらのたか子さんの事業計画は「シャ
ウト系事業」。すでに「あるまま生きる公式」LINEにブログ等、イベントシャウト会
情報が用意されている。「シャウト会」は日常では到底言えない思いを開放・解放するも
ので、シャウト実践講座、シャウトマスター育成などの展開を通じて、2025年に「第
1回ワイルドシャウト大会」を目指している。「叫びは、平和を創る」との信念のもと、
会場一杯に響く声でシャウトする。
3人目の中村三奈子さんは「キラリ人生伴走社」を立ち上げて「人生最期の最期まで楽
しく生き切るために、趣味の力で『今』を楽しむ!」というのが、事業概要である。例え
ば飲食店オーナーに「趣味の活動ができるスペースとして、お店をリニューアルしません
か?」と語りかけ、あるいは趣味特化型・高齢者施設などで、好きなものに夢中になれる
趣味を通して、一緒にできる仲間とともに豊かな人生を目指していくというものだ。
大阪・東京大会とも、彼女たちに共通する印象が、良い子でいた自分の過去に苦しんで
きたこと、素直に自分の意見を言えないまま、引きこもりのような日々を送っていたり、
本当にやりたかったことをできないまま過ごしてきたということ。そこに夢はあるようで
ない、そんな過去の自分を振り返り、新しい自分に一歩踏み出す勇気を与えてくれる場が
ドリプラというわけ。そのチャレンジの原動力が、自分を変えたいという熱意である。
プレゼンを終えられたことによって、彼女たちは確かに変わった自分を見て、時に聞く
者も一緒に涙を流すなど、ドリプラが明らかな自己啓発・自己実現の場だとわかる。まさ
に夢の効用である。
その夢は、夢を語る本人だけではなく、聞く者をも動かす力があることから、ドリプラ
には多くのメンターがいて、彼ら協力者を巻き込んで、自分の夢を磨き上げていく。
あなたの叶えたい夢の実現は?
ウーマン・ドリプラでは、大阪でも東京でもプレゼンの終了後、参加者がいくつかのグ
ループに別れて「あなたの叶えたい夢の実現(ドリプラ)は?」を語り合うワークショッ
プが行われた。
「ウエルネス@タイムス」記者も、強制的に、改めて「夢」に向き合うことになる。
「夢かぁ?」
以前、ドリプラについて考えたとき、以下のようなことを書いたことがある。
夢の優先順位を知ろうと、手近の辞書を引けば『岩波国語辞典』の「夢」の一番目は、
多くの辞書同様、眠っているときに見る夜の夢である。二番目は「実現が困難な、空想的
な願い・理想」とあり、三番目にようやく「(現在のところ実現していないが)将来は実
現したい願い・理想」が出てきて、四番目には「はかないこと、たよりにならないこと」
と続いて、最後は「少しも、決して」という打ち消しを伴う「夢にも思わない」という形
での夢の否定と、それはまるで夢の一生を物語っているようではないか。
そこでは、夢ははかなく醒めていくもののようだが、それは本当の夢の力を知らない者
の知識でしかない。本当の夢を探して、試行錯誤を続ける中から、実は夢が感動を生み出
すことを知って、社会を変える力になることも見えてくる。
ジャーナリズム同様、あらゆるメディアは基本的に他の職業人に比べて、自由に会いた
い人に会える、行きたいところに行ける、つまりはやりたいことができる環境にある。そ
れはジャーナリストが、常に誰かの代わり、読者・視聴者の代わり、あるいは日本人をは
じめ、すべての人々を代表して、何かが起きた場所に行って、見て聞いて、書いたり話し
たりして伝えるのが仕事だからである。
今回のウーマン・ドリプラの取材もその一環だが「良いこと」を世界に広めようと、い
まは「ウエルネス@タイムス」をスタートさせている。
その意味では、夢はいくつも実現してきていると同時に、いまも夢の実現に向けて進行
中ということだ。
ドリプラが実現するディープな出会い
「夢を語るのは恥ずかしい」そんな夢のない時代に、他のドリプラはさておき、ウーマン
・ドリプラは「宝塚歌劇団」ではないが、その舞台は一見に値する。
機会があれば、ぜひ覗きに行ってくることを薦めたい。
ドリプラの会場では、常にメンターカードが配られて、それぞれのプレゼンターを「や
る気にさせる」応援メッセージを送るようになっている。
しかも、無責任な助言ではなく、実際に協力できることが基本であり、ドリプラにおけ
るメンターの特徴は、常に共感したプレゼンターと、いろんな形で関わりが生じてくる。
プレゼンターはメンターの協力のもとに、夢をブラッシュアップしていく。
最初に描いていた夢は、晴れの舞台での発表の時点では、同じ夢でもずいぶんちがって
見えることもある。
その成長、変化とともに、夢を実現していく過程・舞台での晴れ姿が、メンターには我
がことのように思える。そんなお互いを高め会う場を提供しているのが、ドリプラでもあ
る。
そこにはYouTubeやクラウドファンディングで語られる夢とは異なる手作り感満
載の夢と、昨今の手軽で希薄な人間関係とはちがうディープな出会いが待っている。
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