“工業製品”としての食肉産業の実態
絶対得するビーガン&ベジタリアン4
SDGsは無視できない
──今年「ヴィーガン料理」が、国会の食堂のメニューになって、日本における「ベジタリアン革命、ビーガン革命の大きな一歩」とニュースになってました。最近は健康面だけではなく、地球温暖化やSDGsへの取り組みなどからも、代替肉がよく話題になっていますね。
日本のハンバーガーチェーンやコーヒーチェーンでも、ビーガンメニューが登場しているのを見ると、確かに隔世の感があります。
SDGsの観点から、国家財政面(医療費)、CO2削減、倫理面からも、世の中の趨勢、時代の流れがベジタリアン、ビーガンの方向にあることはわかりますけど、それはニュース上のことで、ベジタリアンの実感とは大きな隔たりがあります。
──どういうことですか?
例えば、私のマクロビオティック仲間がモスバーガーに「ベジバーガー」を提案して、何種類か試作したのは、30年近く前のことです。あるいは、知人の料理人から頼まれてアサヒビールの専務(後の社長)にベジバーガーとかライスバーガーを提案したのも、20年も前の話です。
──ホントですか!
まあ、出しても売れないとは思いましたけど、最近はようやく日本でも受け入れられるようになったということだと思います。
とはいえ、現実はどうかと言えば、相変わらずだというのが実感ですよ。
──というと?
例えばテレビを見ていて、料理番組に限らず旅番組でもバラエティでもワイドショーでも料理やグルメもののオンパレードです。タレントやレポーターが「おいしい!」といって口にする料理を見ながら、長年のベジタリアンは「私の食べるものがない」と嘆いてばかりです。
ビーガン用「おせち寿セット」
年末ともなると、特にガックリするのがクリスマスメニューとおせち料理の案内です。デパート、有名ホテル、レストラン、老舗料亭等々、ダイレクトメールで勝手に届くカタログには、いかにも手の込んだ豪華なメニューが並んでいますけど。基本的に頼めるものが一つもない。
──アハハハ。というと、おせち料理は手作りですか?
手作りもありますが、いわゆるおせち料理に関しては、我が家はベジタリアン用の通販「かるなあ」(名古屋市天白区)の精進おせち「おせち寿セット」(8600円)を頼んでいます。
──へえー、どんな内容ですか?
精進八幡巻、ゆば昆布巻、精進すり身の伊達巻、VEGANエビチリソース、ゆばフィッシュ、ソイミートのヴィーガン炙りチキン、照り焼きビィーガンもも肉、紅白かまぼこです。
クリスマスセット(7980円)もあって、こちらはイタリア風ハム、ヴィーガンデリ国産大豆ミート入り春巻き、VEGANシーフードグラタン、ハヤシカレーソース仕立てベジハンバーグ、大豆ミート串焼き、ヴィーガンタンドリーチキン、具だくさんトマトソース付きソーセージ、ヴィーガンデリ国産大豆ミート入りキャベツコロッケです。
──おいしそうですけど。
まあ、華やかさには欠けますけど、ベジタリアンにとっては安心して食べられるのが何よりです。
ハレの日のメニューとして、お盆とか暮れに案内が届くと頼んでます。
毎年、微妙にちがっていて、近年は「ビーガンもも肉」になってますが、以前は骨付きチキンのもも肉に似せたのがありました。大豆ミートですけど、もも肉の丸みや皮のボツボツまで再現していて、ビーガンにはちょっと食べにくい感じでした。
──なるほど、いろいろ苦労があるのですね。
大晦日のベジタリアンの食卓
参考までに、私の「ベジタリアン日記」から2020年の大晦日のメニューを紹介すると、次のような感じです。
朝食 トースト サラダ 味噌汁/ルレクチェ コーヒー
昼食 御飯 バター炒め もやしナムル 梅干し 精進そば(油揚げ・わかめ・舞茸・ きぬさや・ネギ)/ルレクチェ コーヒー
夕食 ちらし寿司(油揚げ・高野豆腐・人参・蓮根・椎茸・きぬさや) お節(精進八 幡巻・ゆば昆布巻・伊達巻・紅白かまぼこ・炙りチキン/黒豆・栗きんとん・なます・ちょろぎ・小梅) 煮物(油揚げ・高野豆腐・車麸・こんにゃく・人参・ごぼう・里芋・椎茸・きぬさや) くわい 澄まし汁(そば)/ビール 日本酒 りんご 緑茶
ちらし寿司と煮物が手作りです。以前、御飯に混ぜるだけというミツカンの「ちらし寿司セット」を使ったことがありましたが、混ぜる前にカツオ出汁の匂いが強くて、ほとんど捨てたことがありました。
真正のベジタリアンにとって、カツオ出汁は、油断大敵です。
あとは普通のおせちに付き物のかずのこ、刺し身、カニやエビ、ごまめの他、洋風の焼き肉ステーキ、豚カツ、鳥の唐揚げなどがなく、代わりに「かるーな」の精進おせちが並ぶといった感じです。
ちなみに、朝の室内の温度は5度。人けのない仕事部屋は3度でした。北国の朝は曇天で暗いのが普通ですが、2020年の大晦日は起きると、部屋が明るく、雪が4~5センチ積もっていました。雪は翌日、元旦にもたまに降っていました。
我が家のビーガン唐揚げ
もちろん、マクロビオティック仲間などは本格的なおせち料理をつくっていますが、我が家はそれほどの情熱はかけないということです。
先日、お寺で精進料理について話をしていたときに、どんな料理をつくるのですかと聞かれて、一般家庭でもできるレシピを紹介したところ「料理教室ができそうですね」と、意外に受けていました。
そのとき、紹介したメニューの一つが家庭用ビーガン唐揚げです。
使う材料は有り合わせの、例えば車麸・高野豆腐・厚揚げ、野菜のゴボウ、蓮根など。人参を使うと、多少彩りが良くなります。
以上の具材に、後は通常の唐揚げの要領で、生姜とニンニクに醤油などの調味料をかけてから、片栗粉をまぶして油で揚げるというものです。
我が家で初めて、ビーガン唐揚げをつくったとき、食べ盛りの息子がパクパク食べるので「鶏肉じゃないんだ」と、種明かしをしたら「エッ?」と驚いていました。
確かに、ちがうと言えばちがうのですが、肉を使った唐揚げのようにも思える。もっとも好評なベジタリアンメニューの一つです。
肉なし肉じゃが?
最近、よく耳にする代替肉といえばしかつめらしく聞こえますが、要は禅僧がつくる精進料理のようなものです。
がんもどきは、その名の通り「雁擬(がんもどき)」です。
イタリアではナスを「貧乏人の肉」と言うそうですけど、野菜を細かく刻んで、ナスと一緒にセロリなどを入れれば、肉なしでもミートソースを食べた気になります。
──本当ですか?
面白いもので、肉なし豚汁(実際は具だくさんの味噌汁にごま油を垂らすと、それらしくなる)にしろ、肉なしすき焼きにしろ、肉なし肉じゃが(実際は玉じゃが)でも、それぞれのメニューの気分は味わえます。かつて食べていた記憶が蘇るような感じになる、肉なし肉料理(?)です。
いずれも肉食との大きなちがいは、お腹一杯になったとしても、重くないことです。お腹にもたれないのですが、逆に肉食の人たちには食べた気がしないという感じにもなるようです。
現在の食肉は「工業製品」?
──そういえば「日本ハム」がブタの飼育環境について改善策に取り組むことになったとニュースになっていました。アニマルライツセンターなどの動物愛護団体が、狭い檻の中で強制的に妊娠を繰り返す「ストール飼育(拘束飼育)」を問題視していて、EUでは2013年から一定期間、妊娠ストールの使用禁止措置が、すでに取られています。日本ハムの動きは、そうした世界的な趨勢に逆らえなくなってのことでしょうか。
そういう時代ですよ。
──背景には人間同様のアニマル・ウェルフェア(動物福祉・家畜福祉)と称する動物の命に対する尊厳に配慮すべきだという考え方があるようです。アニマル・ウェルフェアは環境・社会・企業統治に配慮している企業を対象としたESG投資の条件の一つにもなっています。
職業柄、食品の生産現場はいろいろ見学していますし、中国の日本向け冷凍食品工場まで見てきていますが、そこでの飼育環境、生産加工現場の実態は、動物愛護団体の人間じゃなくても問題だとわかるはずです。
国内の鶏舎や養豚場を県学してきて思うことも「食品」とされてますけど、実は「工業製品」なのだというのが、ベジタリアンの実感ですよ。
生産管理しやすく、効率的に育てるためのシステムができあがっています。なるべく早く大きく大量に育てるためですが、ストレスが多く病気やケンカが絶えないため、餌に抗生物質を混ぜながら育てています。
そうした農場では、大量のニワトリやブタが毎日のように病気で死ぬのが当たり前になっています。
ストレスのない飼育環境の成果
そうした生産現場を見てくると『νG7量子水』(ヒカルランド)の取材で訪れた養豚場や鶏舎で育てられたニワトリやブタは、幸せだという印象があります。
本で紹介されているように、宮崎県の「真ちゃんファーム」の豚肉は、地元・都農町のふるさと納税の人気の返礼品になっています。
また「アグー村」をつくって、沖縄固有の「アグー豚」のブランド化を進めている我那覇畜産のアグー肉は、以前、冬の四大食材を扱ったテレビ番組で、各地のブランド豚の中で最高点を勝ち取っています。
類似技術としては、例えば微生物の力を用いた高嶋康豪博士(高嶋開発工学総合研究所/静岡県沼津市)のEMBC技術による成功事例として、昔から見学コースになっている「柳田ファーム」(埼玉県日高市)があります。
そこのブタたちにも基本的にストレスがないため、落ち着いていてケンカをしない。人を恐れることはなく、人なつっこいといった特徴があります。
ストレスのない環境で育てると、当然ながら肉質もちがいます。堆肥も通常は処分に大金のかかる産業廃棄物だが、農家が欲しがる理想的な堆肥になるので、一石二鳥というわけです。
逆に、アニマル・ウェルフェアが問題視されるような悪環境で育てられた肉を食べれば「お前には食べられたくない」といった悪い波動を体内に取り込むことになる、というのがマクロビオティックの考え方です。
少しでもいい環境で育つ肉類を食べてほしいのは、ベジタリアンには無縁のようでも、食べる人たちがいる以上、どうせなら病気にならないようにしてほしいためです。
病気になれば本人が困る以上に周りに迷惑をかけ、結果的に医療費負担を増やすことにもなるからです。
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