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未来を創るソニーのDNA 田村槙吾講演会「やっとわかったSONY・井深大の魅力」


  未来を創るソニーのDNA 田村槙吾講演会 
  「やっとわかったSONY・井深大の魅力」



 前例がない特異な会社

 日本のソニーは「世界のソニー」です。

 2023年4月には、1997年に亡くなった創業者の井深大が、62年前「未来のA

I時代」を予言したテープが見つかったと「週刊文春」がレポートしています。

 常に、その動向がメディアで伝えられるソニーですが、そのソニーは多くの人材を輩出

してきました。

 井深と同じ早稲田大学理工学部を卒業後、38年間在籍した元技術者の株式会社「ワン

ダーワークス」田村槙吾社長(日本創造学会会長)は、創業者・井深大並びにソニーの“語

り部”として、様々な機会に「前例がない特異な会社」であるソニーの経営・イノベーシ

ョン等をエピソードを交えた講演・セミナーを行っています。

 田村氏と「ウエルネス@タイムス」編集子とは古いつきあいです。人の縁は不思議なも

ので、意外な共通の知人がいます。

 以前は「ソニー歴史記念館」で田村氏が主宰していた異業種交流の「創造性研究会」に

も、何度か参加しています。近年は「銀座の寺子屋」を主宰、毎月、ゲストを迎えてイベ

ントを行っています。

 銀座の集まりには行けないままだったこともあり、4月27日、東京・新橋で行われた

講演会に「参加しませんか? ふらりとお出かけください。乙川弘文(ジョブズの禅の師

匠)のように、浮雲のように現れ、知らずに去っていく」との田村氏らしい誘いを受けて

出かけてきました。

 講演会の演題は「これからの日本を考える 未来を創るソニーのDNA」です。




 理想郷におけるルール

「前例のない特異な会社」であるソニーの原点について、田村氏は「原因」という表現を

使って「創業者・井深大」の特異性に迫っています。

「ウエルネス@タイムス」編集部に送られてきた案内メールには「講演趣旨」の「やっと

わかったソニーの魅力」として、その一端を明かした一文が添付されていました。

 そこに彼が講演で話す内容のポイントが記されています。

「大空のように透明無垢な男」と、田村氏がいう創業者・井深大が作りたかった理想郷が

ソニー(前身の東京通信工業)だったということ。その理想郷には、彼がつくった独自の

ルールがあるとして、そのルールが紹介されています。

「一つは『過去は問うな』である。過去形である市場調査無用。未来は自分の手で創る。

 二つ目は『創造を妨げる壁の撤廃』である。発想即試作。夜間出社オーケー、肩書無用

である」

 そして、全社員が向かうのは、前例のない「新生活の創造」というわけです。

 それが、失敗もあるとはいえ、徹底していた「他人(東芝)のやらないことをやる」、

「とめられたらやりなさい(井深本のタイトル)」、「技術者魂」といったSONYスピ

リッツによる、古くはトランジスタラジオ、テープレコーダー、ウォークマン、そしてプ

レイステーションなどの生活スタイルを変える新製品です。

 1908年、栃木県日光町に生まれた井深大は、3歳のとき、父親を亡くしています。

その後、父方さらに母方の祖父母の元で育つのですが、さらには母親の再婚と運命に翻弄

されます。

 九死に一生を得た戦時体験など、どれほどの苦難があったとしても、なお我々の知る井

深氏は、そんなことなど感じさせない明るさと純粋さ、そして大きさがあります。

 だからこそ、戦後すぐの1946年4月に創業した東京通信工業のバックには錚々たる

ビッグな後見人が名を連ねていました。流行作家の野村胡堂、前田多聞・文部大臣、田島

道治・宮内庁長官、万代順四郎・帝銀総裁などです。

 田村氏は、これらソニーの「物づくりは人づくり」との原風景を、彼が見てきた様々な

エピソードの中から浮き彫りにするわけです。その最大の“売り”は、創業者と同じ時間

と空間を共有したこと。つまりは、ソニーの現場を知る者の強みです。



 井深大の文化勲章受賞とデカルト嫌い

 戦後の焼け跡の中で創業した東京通信工業の「設立趣意書」は、井深自身が起草してい

ます。

 いまもそのまま通用するのが、すごいことだと思いますが、その「経営方針」の冒頭に

は「不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、徒(いたずら)に規模の大を追わず」と書かれています。

 そして「極力、製品の選択に務め、技術上の困難は、むしろこれを歓迎、量の多少に関

せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対称とす。(中略)他社の追随を絶対に許

さざる境地に独自の製品化を行う」というわけです。

 その言葉が嘘ではなく、こうした姿勢をひたすら追求してきたからこそ、1992年に

企業人では初めてという「文化勲章」を受賞したわけです。

 その後、文化勲章を受賞する企業人は何人かいますが、彼らはノーベル賞受賞者です。

 もともと、井深氏が文化勲章受賞者であることを教えてくれたのは、その昔、仕事をし

た「ソニー創業者・井深大の人生を開く生き方」(三笠書房)の著者、ノンフィクション

作家の上之郷利昭氏です。

 上之郷氏はその本の「あとがき」で、井深氏に関して「科学不信」という言葉を使って

います。ちょっと意外です。

 要は、田村氏が講演の中で井深大を「デカルト嫌い」と紹介していましたが、実は現代

の科学のお粗末さを嫌ったということです。

「我思う、故に我在り」の言葉で有名なデカルトは、物と心を分ける二元論を説いて、い

まなお現代の科学は、その影響下にあります。

 そのデカルトの科学がどのようなものかは、例えば「動物ロボット説」「人間は機械的

部品の集合体である」といった結論を見れば、よくわかるのではないでしょうか。

 部品を組み立てれば人間になるかのような、一面的な科学への不信があったからこそ、

ソニーにはソニー神社(常陸出雲大社)が建立されていたのです。

 世界のソニーの本質は、和心のある「大和魂インターナショナル」というわけです。




 教育と心の重要性

 井深氏が製品づくりだけではなく、能力開発の一環として、教育事業をスタート。幼児

教育に力を入れたことは、よく知られています。

 気の実践者である西野晧三氏の「西野塾」で、難病を治してもらったこともある井深氏

は、現代の科学並びに西洋合理主義の対極にある東洋医学、気功、人間の潜在能力といっ

た目に見えない世界への興味と実践から生命情報研究所などの研究所を設立しています。

 田村氏も、そんな研究セミナーの場に参加しています。能力開発の一環として、講師と

一緒に、みんなでスプーンを持って「エイ!」とやったところ、全員ではありませんが、

田村氏のスプーンは曲がっていたそうです。

 超能力というのは、本来、人間が持っていた能力(潜在能力)であるという証明のよう

なものですが、知識過多の人間にはあり得ない現象として、スプーン曲げなどもインチキ

にされてきたわけです。

 田村氏が当日の会場を見回して「この中でスプーンを曲げたことがある人はおりますか

?」というと、3~4人が手を上げていました。さすが右脳教育を掲げたソニー関連の集

まりです。

 通常の会合に集まる人たちより、かなり高い確率です。

「ウエルネス@タイムス」第11号(無名ジャーナリストの仕事https://www.wellness-a

スプーン曲げをはじめとした「超能力教室」における体験をレポートしていますが、そこ

での結論は、「超能力は教育で身につけられる」「超能力とは(かつてあって、いまは失

われた)能力である」というものです。

 井深氏が「不可能はない」と、まさに難題を掲げて、ソニーの開発者をやる気にさせて

きたことは、教育の賜物です。

 カセットテープレコーダーの開発では、どんどん軽量小型していって、限りなくカセッ

トテープの大きさに近づいていったわけですが、その究極の製品は、何と「カセットテー

プのケースと同じ大きさ」というものです。

 そんな無理難題にも、チャレンジして作り上げてしまうのが、ソニーの技術者でした。

ソニーにおけるイノベーションに、不可能はないというわけです。

 それが、未来を創るソニーのDNA「やれば出来る」です。


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