特派員レポート 多様性国家「何でもあり」のインドへの旅 オートリクシャーの営業マンにだまされたのか、ラッキーだったのか!?

ヒンズー教最大の祭典
日本では大阪万博が少しは盛り上がりを見せている中、2025年2月18日、羽田空港からインド行きの飛行機に乗った。
機内泊を含めて9泊10日の旅である。本来の目的は2月20日から22日にかけて開 催された「ジャパン・エキスポ2025」だが、2月はインド観光のベストシーズンと言われている。
日本では週末の連休がある。インドでは世界最大の宗教イベントであるとされるヒンズ ー教最大の祭典「クンブ・メラ」が行われているとあって、航空機+ホテルのパックツア ーはやたら高く、満席などで、手頃なものがない。
ちなみに、ヒンズー教最大の祭典「クンブ・メラ」に関しては、日本でもニュースになっている。例えば、1月29日未明、インド北部プラヤグラージで会場に押しかけた人々が重なるように倒れ、地元警察は少なくとも30人が死亡、60人が負傷したと発表した と伝えている。29日はヒンズー教にとって重要な一日で、1億人が訪れるという。
祭典は2月26日まで続く。死者はその後もニュースになっているが、現地のインド人からは「いい時期に来た」と言われた。
日本在住のインド人がよく利用する旅行社の担当者を紹介されて、いろいろ調べてもら った結果、少しは安上がりになるように、18日の飛行機で行って、26日朝、羽田着 便になった。それでも3泊のホテル代込みで約17万円かかる。残りの4泊は、インター ネットで近年、海外企業などの進出が目立つ新興地区グルグラム(グルガオン)のホテルを予約した。こちらは1泊約6280円×4=2万5120円(朝食込み)である。
当初の予定はジャパンエキスポを見た後、折角なので、世界遺産など、インドの代表的な観光ツアーに参加しようと思ったが、観光目的ではないので、デリー近郊で過ごして、 とりあえず現在のインドの空気を味わってくるというものだ。
しかも「インドはベジタリアン天国です」と言って、ベジタリアンの筆者には「どこでも食に困ることはない」と請け負ってくれた。ベジタリアンが多いインド人が、日本では 「食べるところがない」と嘆いているのとは大違いというわけである。
そんなこともあり、インドのマクドナルドや日本食チェーンなどを訪ねて、いかにインドのベジタリアンに対応したメニューが揃っているかを見てくるというのも、興味深い。

予定はあって無きが如し
3つ目のテーマが、インドに進出した日本のベンチャー企業のブランチを訪ねていけば 興味深いレポートができるというものである。
本来であれば、以前にビジネス情報誌『エルオネス』の連載「ベンチャー発掘!」で取 り上げたことがあり、その後『日本発!世界№1ベンチャー』(三和書籍)に収録した電動バイクの「テラモータース」のインド支社・工場を訪ねたいところだが、その拠点は南インドのバンガロールである。今回は時間的・金銭的余裕がない。
そこで、もう一つ、やはり「ベンチャー発掘!」でレポートした中古車リサイクルの会宝産業株式会社(石川・近藤典彦会長)のインドブランチ・グルグラム(グルガオン)工 場を訪ねることにした。
高いお金を払ってパック式の弾丸観光ツアーに参加するよりは、はるかに有意義なインドツアーというわけである。ニューデリー間の移動を含めて、名所旧跡、各種ミュージアム などを堪能できれば、それだけでインド行きの成果は十分である。それ以上の無理は禁物である。
だが、インドは広い。日本では想像しがたい多様性に満ちている。いわば何でもありのインドでは、何が起こるかわからない。事実、当初の予定など、あって無きが如しとの展開となった。
広いインドに行けば、パック旅行はさておき、たぶんその旅行者の数だけのインド体験 がある。


オン・アライバル・ビザ
インド旅行も多くの海外旅行同様、旅行前からスタートする。
パスポートは当然だとして、ビザの準備をしなければならない。旅行案内等にはインドでは細かい規定は頻繁に変わると書いてあるが、ビザの申請書は大使館のホームページからダウンロードするので、問題はないはずである。
ITに不慣れなシニアなどを除けば、みなさん電子観光ビザ(eビザ)を日本で申請する。旅行社に代行してもらおうと思ったら、1万9000円だとか。確かに高い。
旅行社の担当者も自分でできるeビザを薦めたので、写真を用意して添付するなどチャレンジしてみたが、写り具合や背景など、インドはやたらと厳しいという。
結局、あまりに煩雑なため、インドに着いてから申請するオン・アライバル・ビザにした。申請用紙に事前に記入(記入事項も少ない)しておけば、現地の窓口に提出するだけ で、写真などもいらない。2000ルピーと、実に簡単で安上がりであった。
わからないときは、空港スタッフに申請用紙を見せれば、どこに並ぶか教えてくれる。
その後、荷物をピックアップ。税関へと向かうが、特に申請するものがなければ、そのまま通りすぎて、歓迎や出迎えのカードを掲げた人たちが屯している到着ロビーに出る。 インドに降りた有名人の気分だが、筆者に迎えはない。事前にタクシー代を払うプリペイドタクシーの窓口に行って、ホテルまでの料金を払う。350ルピー。350×1・8= 630円程度だが、これに運転手へのチップが要る。
インド空港に着陸して見る滑走路の様子は、インドのムッとした熱気はさておき、どこも似たようなもので、さほど変わり映えしない。インドの一足先に経済大国になったお隣り中国の近未来的な空港とは大きなちがいである。
空港の外に出て、タクシーの窓から最初に目にしたインドらしさは、2羽のクジャクである。道路脇の高い塀の上に、クジャクの置物が飾られていた。さすがインドだと思っていたら、もう一羽のクジャクが飛んできて、置物と思ったクジャクと一緒に飛んで行って しまった。
羽田空港にユリカモメかトンビが飛び交うようなものなのか。インドの空気は、昔、中国でも感じたことのある石炭を焚いたようなニオイである。あくまで個人的な感想で、実際に石炭を焚いたニオイではないかもしれないが、高度成長へと向かう時代の勃興期のイメージに結びつく印象があるというべきか。

オートリクシャーの営業マン?
ホテルはパック旅行に組み込まれている比較的安いホテルだが、ニューデリーの中心地まで、何とか歩いていける一角、地下的の駅がある交差点脇に立っている便利な場所にある。日本人旅行者も多い。一緒になった日本人に「お仕事ですか?」と聞かれて「ジャパン・エキスポ」と言っても、当たり前だが、誰も知らない。
ホテルは少し古いが、日本のビジネスホテルよりははるかに広いスペースである。お湯は出るが、シャワーである。歯磨きセットはあるが、使い捨てスリッパもナイトウェアな どはない。1リットル入りの水のボトルが2本用意されているのだから、文句は言えないだろうが、日本のホテルのサービスは、改めてすごいと実感する。
ホテルの朝食は専用のコックがいて、なかなか美味しい。食事を終えて、エレベーターまで送ってくれたスタッフに「チップはいるの?」と聞いたら、マネージャーを呼んできた。チップ用の小銭がなかったため「3日分」と言って500ルピー渡した。
インド2日目の2月19日は、近代美術館かインド門にでも行こうと、まずはメトロに 乗った。3日間乗り放題のツーリストパス(50ルピー)を買って、お隣りのメンディハ ウスまで行った。お昼時にもかかわらず、長い車両を連ねたメトロはほぼ満員であった。
インドは至る所、新興国のエネルギーに満ちている。
インド人の他は、たまに海外の観光客がいる程度で、日本人は珍しいのか、悪気はないのかも知れないが、ケンカを売るような視線を送ってきたり、そんな顔を向けられる。
昔、アメリカの田舎や中国、韓国などで似たような印象を抱いたことがあったことを思い出した。
ジャンパト方面に出て、インド門を目指す前に、暑いので上着を脱いで、バッグに仕舞っていると、日本語で話しかけられた。オートリクシャー(トゥクトゥク)の営業マンのようで、近代美術館まで試しに乗ってみようと、値段を聞いたら、50ルピーである。
「その後はどうするのか?」と聞かれて、結局は「旅行代理店に行かないといけない」とか言われて、連れていかれた。
着くと、日本に7年いたという少し日本語を話せるボス(社長)がいて、筆者の予定を 聞いて「グルグラムに4泊はもったいない」と勝手に心配して、弾丸ツアーで定番の世界遺産のアグラ(タージマハル)とジャイプールに一泊して、あとはデリーのホテルに2泊 すればいいと、予約したホテルをキャンセルして、世界遺産ツアーをセットしてくれた。
24日はグルグラムの会宝産業に行かなければいけないというと、筆者の予約したホテルはあたりに何もないところで、しかも目的地はグルグラムの外れで、オフィスのデスクにあるデリー全図には載っていない。その先だという。
だまされたつもりで、運転手付きのツアーに切り換えた。結局、合計30万円のインド ツアーになりそうである。
だが、これはだまされて旅行代理店のカモになったのか。比較的良心的な現地の旅行代理店に出会って、運転手付きの立派な(?)個人ツアーを組めて、取材先への足にもなる 無駄のないインド取材並びに旅ができることになるのか?
モノは考えようである。
だまされて損する日本人は多いが、基本、インド人は日本人には好意的である。例外的にオン・アライバル・ビザがあるのも、その証明である。
参考までにJTBの「るるぶ情報版・インド」には、デリーから行けるツアーとして、 「タージマハル専用車日帰りツアー」は2万4000円から催行していると書いてある。
筆者の場合は、細かい点はさておき5つ星ホテルに2泊して、朝食、入場料等も込みなので、はるかにお得ではある。
だが、まだインドの旅は始まったばかりである。(以下、次号)
Comments