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建設談合の闇に挑む「無水掘工法」裁判 障害者福祉のための永見博希代表の戦い  「無名ジャーナリストの仕事」6

更新日:2022年6月3日


 建設談合の闇に挑む「無水掘工法」裁判 障害者福祉のための永見博希代表の戦い

 「無名ジャーナリストの仕事」6



 コロナ・ウクライナ報道に隠れて

 コロナ報道一色のメディアの風景が、最近はウクライナ情勢との2本柱になっている。

 コロナが問題になれば、コロナ報道。ロシアのウクライナ侵攻が問題になれば、ロシア

・ウクライナ報道一辺倒。日々、新たな進展はあっても、その繰り返される情報の量は凄

まじいものがある。

 当たり前だが、世の中にはコロナ、ウクライナ問題以外にも伝えるべき情報がある。

 とはいえ、コロナの場合もウクライナの場合も命の問題を持ち出されると、他にも大切

なことがあるといった論評は、口が裂けても言えなくなる。

 本来、報じられるべき問題の多くは、メディア側の価値判断の他、様々な事情によって

取捨選択を余儀なくされる。

 企業モノなら大企業優先で、中小企業の問題はどんなに重要な情報でも二の次になる。

 一体、どれだけの事件や問題が、メディア側の判断で読者や視聴者の興味を引かない、

要は売れない、視聴率を稼げない。あるいはスポンサー等の様々な事情のため、ボツにさ

れてきたかは想像に難くない。

 その実態の一端は、これまでも「ウエルネス@タイムス」で伝えてきた通りである。




 二番煎じ・三番煎じが好きなマスコミ

 無名ジャーナリストはこれまで記してきたように、ほとんどなるつもりもなく月刊誌編

集部にデスクを置き、仕事をスタートさせた。

 名刺を持たされ、肩書だけは記者=ジャーナリストとなって、ジャーナリストって何な

のか、先輩ジャーナリストや周りを見て、彼らの真似ごとをしながら、少しずつジャーナ

リストとしての自覚を持って仕事をするようになったのが、実際のところだ。

 コロナやウクライナに限らず、昔から大衆受けする事件が話題になると、二匹目のドジ

ョウを狙って、スクープの焼き直し、二番煎じ、三番煎じが繰り返され、似たような情報

があふれる一方、当面の関心事のラチ外のものは、多くのジャーナリストが記事にしたい

と思っても、なかなか取り上げられない。無名ジャーナリストであればなおさら、企画が

通る可能性は少ない。

 ジャーナリスト見習い時代、自分で考えた企画に「一円玉レポート」と「自販機戦争」

といったレポートがある。

 スクープとは程遠い記事だが、一円玉は水に浮くとか製造費用が1円以上かかるとか、

外国発祥の自販機だが、外国ではすぐに壊されてお金を盗まれるため、安全な日本が自販

機天国になっているといったことなど、意外な事実を記事にした。

 そのとき、ライター仲間から褒められたのは、一円玉や自販機といった地味なテーマで

6~7ページの記事を、読ませる内容にできる文章力とともに、視点の幅広さであった。



 初めての共著『冤罪の研究』

 ジャーナリストデビューをした20代のころ、どういうきっかけかは忘れたが、同年代

のジャーナリスト、ルポライター、編集者仲間が、自然に集まってくる。

 そんなつきあいの中から、同業他社の仕事をして、少しずつ外に目を向けてきた。

 やがて編集部にデスクを置きながら、仲間とのつきあいから他誌にも執筆するようにな

っていった。

 そんな一つが、現在でもある月刊誌「創」での仕事である。先輩ルポライターの猪野健

治氏が編集プロダクションを主宰していた友人と冤罪事件の連載をするというので、無名

ジャーナリストにも声がかかった。

 担当したのは、雑誌で取り上げるには、ちょっと地味な窃盗事件であった。

 弁護士の話を聞いて、おおよその事件と裁判の流れを耳に入れて、最後に確認のため、

冤罪の主人公のアパートを訪ねていった。

 すでに何年も経っている過去の冤罪事件である。事前に電話をすれば、断られるのが目

に見えている。そこで、直接、訪ねていった経緯を最後に掲載したことによって、関係者

からは、意外な展開だと評価された。

 連載は、後に『冤罪の研究』(現代ジャーナリズム出版会)として出版されている。

 無名ジャーナリストにとっては、初めて弁護士とのつきあいが生まれた記念すべき仕事

であった。




「冤罪の研究」からわかること

 問題の冤罪事件は、いわば弁護士側の勝利となったわけだが、実際に取材をして、窃盗

の背景などを調べていくうちに、犯人とされた人物の出自や行動から得た印象は“灰色”

というものだ。罪に問われなかったのはラッキーだったが、犯行を疑われても仕方がない

面もある。それは彼自身もよくわかっていたようである。

 意外だったのは、友人が手がけた割と有名な冤罪事件であった。何か大きな事件で冤罪

とされたのだが、実際にはすでに婦女暴行などの前科が何件もあり、たまたま「冤罪の研

究」で取り上げた事件に関しては「無罪」を主張しているというものだった。

 そのとき気がついたことは、法廷にしろ、メディアにしろ、案外、事件そのものに集中

して、その背景、個人的な環境、条件など、周りのことはあまり問題にしないことだ。

「木を見て森を見ない」というが、事件や個人の事情を弁護側、検察側のストーリーに合

わせて切り取ることにより、有罪か無罪か、二つの真実が生まれるということである。

 いわば、始めから筋書きが決まっているようなものだが、そんなことを考えたのも、た

またま無名ジャーナリストが手がけた「無水掘工法」に関する仕事が、いまや法廷での争

いとなっているためだ。




 7・13億円、34%コスト縮減!

 無水掘工法とは崖や道路脇などの法面を補強・補修する新技術として、1993年にオ

ーナーシステム株式会社(永見博希代表取締役)が開発した技術である。従来工法とは異

なり、その名の通り水を使わずに削孔できることから、機械も小型で、足場も小さくてす

む画期的な技術として、全国650カ所以上の現場で使用されてきた。

 いわば飛ぶ鳥を落とす勢いで急展開した無水掘工法は、1998年度に国土交通省のN

ETIS(新技術情報提供システム)に掲載されたことで、逆に使用されなくなり、やが

て社員も去り、膨大な負債を抱えて、自己破産の手続きを進めるまでになった。

 その紆余曲折は、実に複雑怪奇であり、近年は障害者の新しい仕事(第三の雇用の場)

の創出を通して、障害者の福祉、就労支援事業につなげたいとの取り組みを続けている。

 現在、控訴中のいわゆる滋賀裁判も、そうした取り組みの一環として行われてきた。

 同裁判は、滋賀県と受注者である日本工営株式会社による国道306号の法面補修工事

で、本来は比較検討されるべき無水掘工法を無視。設計業務等共通仕様書1209条12

項の比較検討を行っていないことはルールに反し、その結果の税金の無駄遣いを問題にし

たものだ。

 具体的にはNPO「NETIS新技術活用協働機構」(永見博希理事長)の会員家族が

5人のプロボノ(公共善)弁護団の協力の下に、7・13億円、34%コスト縮減・税金

の無駄遣い分を障害者の就労支援につなげる取り組みとして、2019年2月、大津地裁

に提訴した。

 だが、大津地裁の判決は敗訴。大阪高裁で行われた控訴審も、2022年2月、棄却と

いう結果に終わった。



 「メディアの皆々様、力を貸してください!」

 永見代表は、これまであらゆる手段を使って、無水掘工法の置かれてきた理不尽な状況

について発信してきたが、その一つにフェイスブックを使ったブログがある。

 2022年3月には、大阪高裁での「棄却」を受けて、上告受理申立書提出について報

告している。

「メディアの皆皆様、力を貸してください!! 全国市民オンブズマンの皆皆様、力を貸

してください! 共に協働してください!」と、悲鳴に似た叫びをアップ。「立法府・行

政の行財政改革『公共事業コスト構造改善プログラム』根幹政策に対して、司法が真向か

ら『理由がない』と判断を下した『驚愕』の判決だと思いませんか???」と、問いかけ

ている。

 かつて、無水掘工法を使用すれば、基本的に34%のコスト縮減ができることから、国

土交通省のNETISに登録(現・卒業技術)されてきたのが、崖や斜面など法面工事に

欠かせない土砂災害防止技術としての無水掘工法である。

 その無水掘工法が、公共事業から排除された結果、納税者の知らないところで、未活用

分などを考慮すると、7・13億円どころか、100億を超える血税の無駄遣いが行われ

ている。

 だが、永見代表の問いかけは、昔も今も基本的にマスメディアには取り上げられない。

 災害が増え続ける時代に、公共事業コストの縮減、障害者雇用の促進といういいことず

くめの無水掘工法の取り組みを、業界を敵に回しながらも、何とか抹殺されないようにと

孤軍奮闘している。

 永見代表の切実な叫びを、少しは取り上げようというのは、顧問弁護士である工藤展久

氏と、無名ジャーナリストぐらいなものである。

 無名ジャーナリストの仕事のスタンスは、多くのジャーナリストが手がける派手な問題

は彼らに任せて、その時代に必要とされていながら、誰も取り上げないテーマを手がけ

るというものだ。理由は戦争報道同様、誰かがやらなければならないためである。

 その意味では、道なき道を行く開拓者精神が特徴だと言われたことがある。

 結果、いまだ引き継ぐべきジャーナリストが現れないため、無水掘工法ウォッチャーと

して、定期的に大阪の永見代表のもとを訪ねている。





 従来工法ではできない公共工事現場

 一度は破産を考えた永見代表が、なお諦めることなく戦い続けるのは、心臓に持病を抱え、数年前には病院に担ぎ込まれ、生死の境を3度乗り越え、死の淵から生還してきたこ

ともある。

 そのベースには、これまで無水掘工法によって、多くの災害工事を行ってきて、実際に

7・13億円を超える公共事業縮減に確実に貢献してきたとの自負と実績、その技術がな

きものにされてはたまらないという開発者の怒りと責任感がある。背景には、障害者(ダ

ウン症の息子)を持つ親としての思いもある。

 永見代表がまさに命懸けで守ろうとする無水掘工法の利点に関しては、2つの実績を知

るだけで十分である。

 一つが1993年、当時の建設省福知山工事事務所が行った京都夜久野町の法面防災工

事現場である。

 京都から丹後・但馬、山陰方面への大動脈である国道9号線に面した現場は、法面が急

斜面で、後背には山地が広がり、国道に落ち込んでいくような地形である。

 1992年に防災工事が行われたのだが、厳しい地形のため一部に崩壊が発生し、ロッ

クアンカー工事の再施工が必要になった。

 現場は、従来工法では二次災害の危険があることから、無水掘工法による施工が行われ

た。結果、800万円もの予算下方修正を実現するなど、画期的な工事現場として、今な

お語り継がれている。

 こうした実績が評価されて、国交省のNETISに登録されるわけである。

 もう一つがNETIS登録後の2000年、国交省のパイロット事業として行われた中

国地方整備局山口工事事務所の国道2号線勝谷防災工事である。

 同整備局・中国技術事務所がパイロット事業の「成果概要」の中で紹介している。それ

によると、同国道は交通量が非常に多く、しかも片側一車線のため、交通規制が難しいこ

とから、従来工法ではなく無水掘工法の出番となった。

 無水掘工法でなければ不可能な工事現場であると同時に、3200万円のコスト縮減と

工期短縮を実現し、2002年の本省発表となった現場である。

 いずれも、従来の法面工事におけるロックアンカー方式ロータリーパーカッション工法

では、できない現場である。



 使われなくなった理由を考えない裁判所

 無水掘工法が使われなくなった理由は、要するに業界を敵に回したこと。それだけのこ

とだが、裁判では滋賀県側、大手建設・コンサル会社側に都合のいいように、使われない

理由をはじめ、近年の使用実績が表向きないことなど、当初の問題の本質から離れた部分

に着目することによって、どんどん問題の本筋からかけ離れていくといった経緯をたどっ

ている。

「裁判官自身、何が問題かわかっていないんじゃないの」というのが、大津地裁並びに大

阪高裁の判決内容を読んでの無名ジャーナリストの感想である。

 なぜ、竹下登元首相秘書の青木伊平氏が社名の名付け親となり、故・竹下亘衆院議員が

株主になっていたオーナーシステムの無水掘工法が、急成長を遂げた後、国交省推奨技術

となりNETIS登録技術となった結果、使用されなくなったのか?

 判決は、その事実に向き合うことなく、1209条ルールを守れとの会計検査院是正勧

告を考慮せず、背景にある無水掘工法を巡る国土交通省と地方整備局等の出先機関との関

係や、建設(アンカー工事)、設計コンサルタント業界の利害が複雑に絡み合う、建設談

合の闇・既得権益の壁ともいえる実態に踏み込むこともない。

 当然、なぜ、非力な永見代表さらにはNPO法人「NETIS新技術活用協働機構」が

国や行政、既得権益のある建設・設計コンサルタント業界を相手に戦ってきたのか、その

経緯と思いに向き合うこともない。

 詳細は別の機会に譲るが、法廷が庶民感覚とは無縁な世界だと言うのは簡単だが、その

結果、血税の明らかな無駄遣いが裁判所のお墨付きを得て、堂々と行われることになる。

 事実、近年は「使用実績がない」というのが、被告側の言い分だが、表向き無水掘工法

「使用」を謳うことはないが、実際には多くの現場で無水掘工法が活躍している。

 無水掘工法の使用実態、その真実を知りたければ、裁判官はオーナーシステムに代わっ

て、この戦いの10年間に急成長を遂げた無水掘工法の実践部隊である株式会社「ソルテ

ック」(塩田彰社長/LLP有限責任事業組合「無水掘工法設計比較検討支援事務所」協

会員)に聞けば、わかるはずだ。

 大阪での2007年以降の使用状況、さらにはスリランカでのODA事業プロジェクト

に元請JVとして国際貢献に寄与した無水掘工法の活躍ぶりを語ってくれるはずである。

 そうした部分を無視することによって、真実を反映しない判決が下るわけである。

 また、弁護士側も国交省技術調査課の1209条の見解に関して、訴訟の行方を左右す

る重要なヒアリング資料を、なぜか提出しないことなど、何とも不可思議な展開になって

いる実情に関しては、後日、改めて報告することにする。

 この間、地味な業界での一連の取り組み、訴訟にまで至る展開から見えてくるのは、金

銭的な成功と挫折とともに、業界の裏側にある人間の愚かさ、ずるさなど、見たくもない

人間ドラマである。


号外:第十七弾:2022滋賀県住民訴訟『NETIS無水掘工法®』 控訴審判決文令和4年2月24日 https://ameblo.jp/ntp150401/entry-12729558205.html








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