最後は“焼身自殺”覚悟で「国交省の罪を告発する!」
税金の無駄遣いと官製談合の「無水掘工法裁判」 無名ジャーナリストの仕事10
最後は覚悟の焼身自殺!
「公僕」とは辞書を引くまでもなく「公衆に奉仕する人」要は「公務員」のことだ。いま
や公僕は“死語”とまでは言えないが、ほとんど目にする機会がなくなっている。
そんな公僕=公務員の実態は、実際に中央官庁を訪ねていくと、よくわかる。
国民・一般市民は、本来、彼らのいわば主人役である。
その昔は、一般市民が用事があれば、基本的に大臣官房まで訪ねていくことができた。
それがいつのころからか、主客転倒したまま、国民をそれとなく遠ざけるシステムを完備
する存在へと変わってしまった印象がある。
1970年代、過激派によるビル爆破などが続いて、その後、官庁街でも不審者のみな
らず、訪問者の持ち物検査等、やたらチェックが厳しくなった。
いまでは、一般市民はセキュリティだ、コンプライアンス(法令遵守)だといった防御
システムにより、まるで犯罪予備軍を迎えるがごとき対応を受ける。
と、そんなことを考えたのも、2022年12月9日、無水掘工法の開発者である「オ
ーナーシステム株式会社」永見博希代表を訪ねていった際に「最後は国交省前で、ガソリ
ンを被って、覚悟の焼身自殺です!」との告白を聞いたためである。
焼身自殺とは物騒な発言だが、実際には以前にも聞いたことがある。永見代表には、そ
れだけの熱い思い、拭いがたい無念があるということだ。
公僕「国交省」窓口のメール拒否
無水掘工法は崖や道路脇などの法面を補強・補修する新技術として、1993年に永見
代表が開発した技術である。その名の通り水を使わずに削孔できるため、機械も小型で足
場も小さくてすむ画期的な技術として、全国650カ所以上の現場で使用されてきた。
だが、国交省の指導の通り、1998年度にNETISに登録した結果、大儲けしてい
た会社は、やがて仕事を失い、一度は自己破産を覚悟。ストレスの果てに、3度、救急搬
送された。
運良く生き延びたことから、改めて無水掘工法によって、国の財政(コスト縮減)に多
大な貢献をしてきたこと。その技術が結果的に、国と業界による“官製談合”の結果、な
きものにされつつある。
いわゆる「滋賀県NETIS住民訴訟」は、滋賀県と受注者である日本工営株式会社に
よる国道306号の法面補修工事で、本来は比較検討されるべき無水掘工法を無視。設計
業務等共通仕様書1209条12項の比較検討を行っていないことはルールに反し、その
結果の税金の無駄遣いが生じていることを問題にした裁判だ。もともと地域住民が、国に
代わって地方を訴えたようなものである。
具体的にはNPO「NETIS新技術活用協働機構」(永見博希理事長)の会員家族が
弁護団の協力の下に、7.13億円、34%のコスト縮減・税金の無駄遣い分を障害者の
就労支援につなげる取り組みとして、2019年2月、大津地裁に提訴。2022年7月
29日、最高裁で「上告棄却」の判決が下されている。いわば門前払いである。
そこでは無水堀工法の矛盾も、なぜ永見博希代表が、たった一人の戦いを長年続けてい
るのか、その思いに向き合うこともない。
納得が行かない永見代表は、国交省の考えを確認するととにも、新たな解決策を提案す
るため、担当の技術審議官とメール等の交渉を続けてきた。
その担当窓口が、2022年8月、引き継ぎのないまま新しい担当者に交代。何度かの
やりとりの後、あろうことか相手方から「メール拒否」される事態になっている。
公僕としてあるまじき振る舞いである。一体何があったのだろうか。
「7.13億円、34%コスト縮減」
これまで伝えてきたように、一度は破産を考えた永見代表が、なお戦い続けるのは、無
水掘工法によって、実際に7.13億円を超える公共事業縮減に貢献してきたとの自負と
実績、その技術がなきものにされてはたまらないという開発者の怒りと使命感がある。背
景には、障害者(ダウン症の息子)を持つ親としての思いもある。
滋賀裁判以前の問題として、いわば飛ぶ鳥を落とす勢いで急展開した無水掘工法は、国
交省のNETISに掲載されたことで、逆に使用されなくなり、膨大な負債を抱えて、自
己破産の手続きを進めるまでになった。
本来、NETISは「公共工事の品質の確保とあわせて、技術力に優れた企業が伸びる
環境づくり、公共事業に関連した民間分野の新技術開発の取り組みの促進を図るため」構
築された「新技術活用システム」である。
2001年度には「公共工事における技術活用システム」を構築し、運用を開始した。
「技術と経営に優れた企業が生き残る環境整備」を謳い文句に「全国の建設省・地方建設
局工事事務所等で新技術の活用が測れます」と、盛んにアナウンスされていた。
その謳い文句を信じて、無水掘工法を使用すれば、基本的に34%のコスト縮減ができ
る新技術として、NETISに登録されてきたのが、無水掘工法である。
その無水掘工法が、公共事業から排除された結果、納税者の知らないところで、7.1
3億円どころか、未活用分などを考慮すると、100億を超える血税の無駄遣いが行われ
ている。
国交省は、この事実をどう考えているのか。何の責任も感じていないのだろうか?
無水掘工法でしかできない公共工事現場
無水掘工法の利点に関しては、2つの実績を知るだけで十分である。
飛ぶ鳥を落とす勢いで仕事を続けていた1993年、無水堀工法による工事現場が注目
の工事現場として、国交省(建設省当時)から発表されている。
それが建設省福知山工事事務所が行った京都府夜久野町の法面防災工事現場である。
京都から丹後・但馬、山陰方面への大動脈である国道9号線に面した現場は、法面が急
斜面で、後背には山地が広がり、国道に落ち込んでいくような地形である。
1992年に防災工事が行われたのだが、厳しい地形のため一部に崩壊が発生し、ロッ
クアンカー工事の再施工が必要になった。現場は従来工法では二次災害の危険があること
から、無水掘工法による施工が行われ、800万円もの予算下方修正を実現するなど、画
期的な工事現場として、今なお語り継がれている。
もう一つがNETIS登録後の2000年、国交省のパイロット事業として行われた中
国地方整備局山口工事事務所の国道2号線勝谷防災工事である。
同整備局・中国技術事務所がパイロット事業の「成果概要」の中で紹介している。それ
によると、同国道は交通量が非常に多く、しかも片側一車線のため、交通規制が難しいこ
とから、従来工法ではなく無水掘工法の出番となった。
無水掘工法でなければ不可能な工事現場であると同時に、3200万円のコスト縮減と
工期短縮を実現し、2002年の本省発表となった現場である。
これら数多くの実績があったからこそ、その後、1998年にNETISに掲載された
わけである。
2005年11月には、北陸地方整備局地域防災ドクターの大川秀雄氏(新潟大学地域
共同研究センター長/現・新潟工科大学学長)を会長にした「新潟県無水堀工法協会」が
誕生している。
無水堀工法の価値と将来性が評価されてのことだが、大川会長は新潟大学工学部長当時
「水を使わないで法面工事ができるだけでも、無水堀工法は素晴らしい技術だ」と語って
いた。その技術が、NETISで本格運用となってから、使用されなくなったのだ。
この事実を国交省はどのように考えているのか。明らかにおかしな展開に関して、国交
省には何の責任もないのだろうか?
官製談合による無水掘工法排除
無水掘工法が使われなくなった理由は、要するに業界を敵に回したことだ。ルール通り
使用されれば、適正な利潤は確保されるのだが、34%縮減という数字は売上高重視の民
間企業にとっては、かなり抵抗のある数字である。
業界を敵に回した滋賀裁判では、滋賀県、大手建設・コンサル会社側に都合のいいよう
に、使われない理由をはじめ、近年の使用実績が表向きないことなど、本質から離れた部
分に着目することによって、どんどん問題の本筋からかけ離れていくといった経緯をたど
っている。
1.なぜ、竹下登元首相秘書の青木伊平氏が社名の名付け親となり、故・竹下亘衆院議
員が株主になっていたオーナーシステムの無水掘工法が、急成長を遂げた後、NETIS
登録技術となった結果、使用されなくなったのか?
2.判決は、1209条ルールを守れとの会計検査院是正勧告を考慮せず、背景にある
無水掘工法を巡る国土交通と地方整備局等の出先機関との関係、建設(アンカー工事)、
設計コンサルタント業界の利害が複雑に絡み合う、建設談合の闇・既得権益の壁ともいえ
る実態に踏み込むこともない。
3.当然、なぜ非力な永見代表並びにNPO法人「NETIS新技術活用協働機構」が
国や行政、既得権益のある建設・設計コンサルタント業界を相手に戦ってきたのか、その
経緯と思いに向き合うこともない。
滋賀裁判では、県の代わりに住民が工事の不正と県の損害を問題にしているわけだが、
実質的な損害を受けている県が訴えていないことを、却下の理由の一つにしている。
そのこと自体、まさに官製談合の動かぬ証拠とも言えそうだが、始めに結論ありきとい
うのが、この手の行政訴訟である。
無水掘工法が当該工事のみならず、表向き他の工事でも使用されていないこともあり、
必ずしも採用されるべき技術ではないことを証明しようと懸命に強弁しているが、NET
IS登録前は650件以上もの工事を行っていて、まさに技術と経営に優れた企業として
脚光を浴びていたのである。
その技術がNETIS登録後、本格運用されるようになってから、表向きゼロになった
ことのほうが、おかしいのではないか。
事実、近年は「使用実績がない」というのが、被告側の言い分だが、表向き無水掘工法
「使用」を謳うことはないが、実際には多くの現場で無水掘工法が活躍している。
無水掘工法の使用実態、その真実を知りたければ、裁判官はオーナーシステムに代わっ
て、この戦いの10年間に急成長を遂げた無水掘工法の実践部隊である株式会社「ソルテ
ック」(塩田彰社長/LLP有限責任事業組合「無水掘工法設計比較検討支援事務所」協
会員)に聞けば、わかる。
大阪での実績の他、年商25億円の注目企業として、スリランカでのODA事業プロジ
ェクトに元請JVとして国際貢献に寄与している。同社のホームページ等には、スリラン
カで活躍する無水掘工法の現場がアップされている。
そうした部分を無視することによって、真実を反映しない判決が下るわけである。
法廷が庶民感覚とは無縁な世界だと言うのは簡単だが、その結果、血税の明らかな無駄
遣いが裁判所のお墨付きを得て、堂々と行われることになる。
質問に答えない国交省の罪
ある事実を組み合わせていけば、パズルのように、すべてのピースが埋まって、真実に
到達できるはずだが、世の中はそのようにはできていない。屁理屈を重ねれば、常識を超
える詭弁として有名なのが、足の速いアキレスが亀を抜くことができないという古代ギリ
シアの哲学者ゼノンのパラドックスである。
いわば相手の土俵に立っていると、肝心なことが無視されて、明らかにおかしい事態が
起きているのにもかかわらず、亀はいつもアキレスの前にいるというわけだ。要は時間を
無視することによって、成り立つ詭弁だが、細かい事実にこだわり、大筋を無視すると、
白が黒に黒が白になることを教えている。
滋賀裁判なども似たようなものだが、もともと無水掘工法問題並びに裁判の結果を左右
することになる、原点とも言える典型的な現場が、無水掘工法が巧妙に排除された東九州
道工事である。
九州地方整備局佐伯河川事務所での2009年度「東九州道工事」において、発注前に
は無水掘工法の積算基準を用いて工事費用を積算しながら、工事の発注時には工法指定を
せず、入札公告中の「特記仕様書」で「アンカー工事の削孔については、無水掘工法での
施工を想定している」との記載を行っている。「想定」という前代未聞の表現により、結
局、無水掘工法が排除されている。
同様の行為は、大阪府でもあり、オーナーシステムが大阪府を相手に訴訟を提起してい
る。最高裁判決では、NETISが国の規範であることを理由に「地方自治体を規律する
規範ではない」として、訴えを退けられている。いわば国のルールを、地方では無視して
もいいという判断を、最高裁が下している。
一方、「国との関係では直接適用すべき規範であること」を認めており、国が発注した
東九州道工事に関するルールを無視した発注に対して、2016年12月、国交省宛てに
「東九州道工事に関する事実調査」と「このようなNETISによる新技術の活用が許さ
れるのか」の回答を求めている。
滋賀裁判等における判決を左右する重要な内容のためだが、2017年1月、国交省事
務官・姫野氏(当時)から電話連絡があり「正式な回答を用意するまで、少し時間を要す
るので待ってほしい」との連絡があったまま、その後、回答はない。
改めて、永見代表としては、国交大臣(斉藤鉄夫)に宛てた特定非営利活動法実NET
IS新技術活用協働機構、オーナーシステム株式会社、有限責任事業組合「無水掘工法設
計比較検討支援事務所」連名による「質問書」を用意しているという。
無水掘工法の戦いはまだまだ続く
度重なる問題点の指摘や質問に、回答を拒否したままの国交省の責任は大きい。そして
回答のない国交省に対して、また滋賀裁判等でも門前払いの仕打ちを前に、永見代表が現
実的な対応策として提案しているのが、無水掘工法が使用されることにより、大きく国家
財政に寄与できることを前提にしたリカバリー案「無水掘工法基金」の創設である。
原資は無水掘工法による公共工事コスト縮減実績7.13億円を当てるというもの。
リカバリー案は、現実的な解決策として、永見代表は「除雪車方式」と呼んでいる。
雪国では大雪の際、道路の除雪作業に活躍する除雪車は、基本的に国交省の所有物であ
る。国が管理することによって、有事に効率的な作業を行うことができる。
現在、ほとんど出番のなくなった無水掘工法機械を、国が管理することによって、全国
の法面工事現場で、必要なときに貸し出すというシステムである。
これまで無水掘工法が公共工事コスト縮減に貢献してきた金額を考えれば、無水掘工法
機械の管理など安いものである。
永見代表の思いは、開発者としての権利をすべて障害者に役立つものとして譲渡。障害
者(生活保護需給者)がニュー・タックス・ペイヤー(新しい納税者)になれる障害者の
経済的自立活動を可能にしたいというものだ。
その第一歩として、首相官邸における「再チャレンジ支援策・勉強会」の立ち上げを提
案している。
これまで国の施策に振り回され続けてきた無水掘工法だが、そのすべてを生かすための
施策が「無水掘工法基金」というわけである。
それは、国交省のこれまでの様々な問題点を最終的にリカバリーする解決策でもある。
どこまで永見代表の思いが受け入れられるのかは未定だが、永見代表の戦いはまだまだ
続く。
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