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「逃げるな! 国土交通省」           無名ジャーナリストの仕事 不祥事続きの省庁は嵐の過ぎるのを、ただ待つだけ?


 「逃げるな! 国土交通省」           無名ジャーナリストの仕事
 不祥事続きの省庁は嵐の過ぎるのを、ただ待つだけ?



 3億円事件の「特別捜査班」

 その昔、無名ジャーナリストが、一般総合誌で仕事を始めて、編集手伝いなどをしてい

たころ。見習い記者でも、名刺を持たされれば、相手は大手出版社のまともな記者として

対応する。

 こちらが正直に「素人同然です」と言ったところで「またまた謙遜を!」と言われるの

がオチである。

 そんな記者だが、業界の悪弊に染まらない正直さが武器になることもある。

 1968年12月、世情を騒がせた3億円事件が起きた。警察官を装って、白バイに乗

って、颯爽(?)と3億円入りのジュラルミンケースを強奪して行方を眩ませた犯人は、

似顔絵が出回り、3億円犯人とされた男性が話題になったりして、大いに話題になったが、やがて迷宮入りした。

 事件勃発当初、こぞってマスコミが3億円事件を追う中、グラビアページで警視庁の3

億円特別捜査班の紹介をする企画が出て、警視庁との交渉を担当させられた。

 桜田門の警視庁の広報課を訪ねて、企画を説明することから始まるのだが、企業の広報

とちがって、何かと手続きが必要で、やりとりをしている間に、通常は締め切りが過ぎた

り、面倒臭さに企画そのものを取り止めたりしたくなる。

 編集見習いの立場で、雑誌の編集部としても、さほど期待はしていないため、締め切り

もあってないようなもの。取材できて、写真を撮れれば御の字という感じなので、お固い

警視庁の職員相手に真面目な対応を続けることによって、捜査一課の担当者につながるこ

とができた。

 名刺を出すと、通常は出さないようで「名刺は自分のお金でつくっている」と言ってい

た。なるほど、そういうものなんだと知った最初である。

 真面目というか、頼り無い編集見習いが珍しいのか、逆に心配してくれたのか、取材の

当日には「3億円事件特別捜査班」との大きな看板を掲げた部屋のドアを少し開けて、中

の様子がわかるようにしてくれた。経験豊富なカメラマンは、まるで特ダネ写真を撮れた

というように、喜んでいた。

 真面目、正直のなせる技である。おかげで、無事、グラビアページはでき上がった。




 テリー伊藤の「交通刑務所」体験

 記者クラブ制度がある中で、新聞社にとって官庁の取材は簡単だが、雑誌・週刊誌とな

ると、まずは警戒される。普段、官庁の都合がいい情報を取材にくることなどはマレだか

らである。何か問題が生じたときに、新聞等の報道メディアが取り上げない中、大事件と

して記事にするためだ。

 もちろん、常に相手に都合の悪い取材ばかりではない。

 そんな中、忘れられないのが、テリー伊藤氏とカメラマンと一緒に行った千葉県市原市

にある「交通刑務所」である。そのときの取材内容は『テリー伊藤の怖いもの見たさ探検

隊』(光文社)になっているが、問題は取材のOKが出るまでの交渉並びに手続きの煩雑

さである。

 その取材の困難さを乗り越えるには、大袈裟だが、生半可な忍耐・努力では足りない。

たぶん、多くのメディアが途中で挫折し、ルポすることを諦めたはずである。

 本来、ルポの対象としてはなかなか魅力的な交通刑務所が、実際の記事やテレビ番組に

なるのが稀なのは、たぶんそのためもある。

 そんな交通刑務所の体験ルポが実現したのも、ひたすら真面目な対応を続けた結果であ

る。一般的な官庁以上に融通の効かない、当たり前に規則や規律に厳しい相手には、こち

らも誠実に対応するしかない。その結果、貴重な体験ルポが成立したわけである。



 広報の役目を果たさない国交省「広報部」

 3億円事件の警視庁も交通刑務所も、取材が実現したのは、取材のハードルが高いとは

いえ、どちらも広報部が機能していたためである。

 2つの事例を紹介したのは、他でもない。国土交通省の広報部のお粗末さを体験して、

そのあまりのちがいに、驚くというか、呆れているためだ。

 すでに「ウエルネス@タイムス」(第19号)で伝えているように、広報部を訪ねて、

門前払いを食って、改めて用件の主旨を書いた企画書並びに質問状を添えて、広報部に持

参した。

 失礼がないように、ていねいな手順を踏んだつもりだったが、広報部に通されるどころ

か、門の脇の設けられた受付で待たされて、立ち話で中身も確認しないまま「これで広報

の仕事は終わった」とばかりに去っていった。

 民間企業では考えられないような広報失格の振る舞いだが、国交省では子供の遣い程度

でも仕事になるということか。もともと、旧運輸省・建設省は戦後疑獄事件として名高い

造船疑獄の他、信濃川河川敷問題、建設談合など、いわば問題だらけというのが、昔から

の国交省の伝統でもあった。それはいまも変わらない。

 2023年早々、中部空港の埋め立て工事を巡る談合で、国交省中部地方整備局の名古

屋港湾事務所の元所長が逮捕されている他、6月には民間企業への人事介入問題で国交省

航空局長が利害関係者の接待を受けていたことが発覚し、懲戒処分を受けている。

 いまも、国交省の政務次官を務めていたこともある秋本真利議員が洋上風力発電を巡り

収賄容疑で問題になっている。もちろん、他にも記事にならないハレンチ事故もある。

 不祥事慣れしているということか。大手メディアが動かない無水掘工法問題などは、ま

ともに相手にする必要はないというわけである。

 しかも、長年にわたり無水掘工法は国土交通省では厄介な案件のようで、開発者である

「オーナーシステム」永見博希代表は、昨年夏、新しく担当になった審議官とのメールの

やり取りを拒否され、質問並びに告発書を無視されたまま、今日に至っている。

「ウエルネス@タイムス」では、永見代表の命がけの戦いを、全国の障害者のため、また

税金の無駄遣いを是正することに役立つならと、地味でわかりにくい無水掘工法問題並び

に裁判に関する展開をレポートしてきた。



 国交省に送った質問状

 2023年1月、広報課を訪ねていった経緯は「招かれざる客への国土交通省の対応」

の記事の中に書いている。

 問題の内容を理解しやすいように「コスト34%縮減の無水掘工法」の特徴と、民営時

代、ボロ儲けしていたオーナーシステム株式会社の、その技術がNETIS(新技術情報

提供システム)に登録され「国のお墨付きを得て、さあ、これから民営時代以上に仕事が

増えるぞ!」と、機械の製造、職員の確保などを考えていたところ、何のことはない。無

水掘工法でしかできない難工事を除いて、やがて排除されていく。

 無水掘工法が本来の技術とは関係ない、業界の論理によって無視されていった“悲劇”

ということである。

 以下、2023年1月に送った質問状を再録する。

 質問内容は、もともとの問題がNETIS登録後、2006年に本格運用になってから

の無水掘工法排除、並びに東九州道に対する国交省の不可解な対応にあることから、改め

て大阪裁判、滋賀裁判(いずれも棄却)の原点とも言える諸問題に関して、国交省の見解

と責任を質そうというものである。

         *                   *

 無水掘工法(開発者・永見博希「オーナーシステム」代表)に関する質問

1.永見氏が長年、連絡を続けてきた国土交通省の担当窓口(大臣官房技術審議官室)が

 2022年8月、新しい担当者に引き継がれた後、連絡が取れずに「メール拒否」とな

 った件に関して。

  公僕にあるまじき対応に関して、どのような正当性があるのか、理由を教えていただ

 きたい。

2.NETIS登録前、いわゆる民間時代、全国650件以上の実績を上げて、大儲けし

 ていた無水掘工法がNETIS登録後、現在は表向きの実績はゼロです。結果、自己破

 産覚悟の状態にあります。

  なぜ、このような不可解というか、理解できない状況になっているのか。NETIS

 登録を指導した国交省の責任について、どう考えているのでしょうか?

3.2010年度の東九州道佐伯河川工事の積算に無水掘工法の積算基準を使っていなが

 ら、入札公告中の特記仕様書に「無水掘工法での施工を想定している」と「想定」なる

 聞いたことのない表現により結果的に排除され、任意施工になっています。

  どこから「想定」なる言葉が出てきたのか、その根拠は何でしょうか。

  永見氏は「官製談合」のなせる技と言っています。

4.2010年8月、永見代表は大阪府が無水掘工法を積算のみに利用、本来そこに含ま

 れる技術開発費が支払われていないことからルール通りに用いるべきだとして、損害賠

 償並びに新工法の商標使用差し止めを求めて、大阪府を提訴しています。

  裁判の結果は、2012年7月12日の最高裁判決で、NETISが国の規範である

 ことを理由に、地方自治体を規律する規範ではないとして、訴えは棄却されました。一

 方、国との関係では、規範は当てはまるとの判断を下しています。

  最高裁の指摘は、国交省の指導とは異なる見解ですが、どのように考えたらいいので

 しょうか? この判断は滋賀裁判にも影響しています。

5.2019年2月に始まった滋賀裁判に関して、2022年7月29日、最高裁で国と

 地方とは異なるとの大阪の判断を踏襲、棄却されています。

  この裁判は県に代わって地域住民が代わりに、無水掘工法を使用しない結果、税金の

 無駄遣いが発生していることを問題にしています。最高裁では、上の理由に加えて、当

 事者である県が訴えていないことも、却下の理由の一つとしています。

  明らかにNETIS並びに設計業務等共通仕様書「第1209条12項」の「設計業

 務の条件」を無視しています。結果、官製談合そのものではないのかとの指摘について

 どのように考えているのでしょうか。

6.無水掘工法が使用されなかったことにより、多大な税金の無駄遣いと同時に、開発者

 である永見代表への特許料等の未払い分が発生しています。法的に損害賠償請求を求め

 る前に、永見代表は「リカバリー案」を提案しています。要は、無水掘工法機械を国交

 省が管理することによって、無水掘工法がNETISのルール通りに使用されることで

 34%のコスト縮減が可能になるというものです。

  開発者も国交省並びに納税者にも納得のいく現実的な解決策だと思われますが、国交

 省としては、どのように考えているのでしょうか。



 担当の大臣官房・技術調査課

 以上、いまだ6項目の質問に対する回答はない。

 無水掘工法を使用せず、従来工法で施工されたことによる損害金に関して、永見代表は

7億1300万円(公共事業費削減実績)としているが、その額は工事全体ではなく、無

水掘工法の特徴である仮設足場価格のみを算定基準にしている。

 永見代表が自己破産を余儀なくされるほどの実質的な損害を加算すれば、軽く10億円

は超えてしまう。さらに、その7億1300万円は永見代表が調べた当時の金額である。

 その後も、公共工事の現場で無水掘工法が使われていれば、10億どころか、50億、

100億円どころの話ではない。永見代表が試算したところ、何と「256億円」に上っ

たというのが、前回のレポートである。

 国交省が誠実な対応を見せないまま逃げ回っている間にも、その額はさらに巨大なもの

になっていく。まさに「塵も積もれば山となる」である。

 無名ジャーナリストとしても、なしのつぶての国交省の対応にうんざりしながら、なお

誠実な対応を取るしかない。

 何度問い合わせても、窓口となっている人物の回答は、要領を得ない。古い案件のため

とか担当者が多岐にわたりとか、その場限りの言い訳に終始している。

 改めて、連絡を入れると、なぜか「担当者」につながった。「新任」のため、問題の背

景を深くは知らないためかもしれないが「現在、準備しているところです」と言って「近

いうちに回答致します」とのことである。

 どこまで、その言葉を信じていいのか。これまでの対応が改められるとも思えないが、

それでもなお、納税者代表の質問には、答えられる問題だけでも、答えたらどうかという

のが、今回のメッセージである。

「逃げるな! 国交省」と、こんなことを大の大人相手に言わなければならないジャーナ

リズムの情けなさを少しは考慮してもらいたい。

 来年80歳になる永見代表は、持病のため、定期的に病院に通う身である。国交省は答

えないことで、暗に永見代表の死を待っているということか。

 確かに、最後は「国交省前でガソリンを被って投身自殺する」という覚悟の永見代表だ

が、その決行前に亡くなる可能性もある。





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