ダーツの始まりは「ラブストーリー」その後の日々 12 ハードダーツの時代からソフトダーツへ 作家・波止蜂弥(はやみはちや)
- vegita974
- 16 時間前
- 読了時間: 8分
更新日:10 時間前
ダーツの始まりは「ラブストーリー」その後の日々 12
ハードダーツの時代からソフトダーツへ 作家・波止蜂弥(はやみはちや)


INIって、何?
2025年11月のNHKの「あさイチ」の「特選!エンタ」コーナーに、11人の男性人気グループ「INI」が登場、トークとライブを披露していた。
INIは2021年6月に結成された個性豊かなメンバーやエネルギッシュなパフォーマンスなど、魅力に満ちた「グローバル・ボーイズ・グループ」である。
と、まるで知っているように話しているが「紅白歌合戦」に登場する歌手やグループさえ知らないことが多いぐらいで、「INIって何。韓国人グループ?」というのが、番組を見た印象である。番組で最初にメンバーの許豊凡さん(中国出身)が流暢な日本語を話していたこともある。
実際は、韓国発サバイバル・オーディション番組「PRODUCE 101」シリーズの日本版として、吉本興行、TBSなどが制作した番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」で“国民プロデューサー”と呼ばれる視聴者の投票によって選ばれた11人の日本人グループである。
グループ名には「11人の僕たち(私=I)があなた(I)とつながり合う(Network)」との思いが込められているという。
2021年の「第63回日本音楽大賞」で新人賞を受賞。今年の紅白歌合戦に出ても不思議ではない人気のようで、事実「AERA」編集部が「NHK紅白歌合戦に出場してほしい歌手は?」とのアンケートで、第一位になっている。知らないほうが少数派かも。確かに、それでなければ「あさイチ」に出るはずもない。
以上、前置きが長くなったが、本題はダーツである。
アイドルの部屋にあるダーツ機
「あさイチ」では、MCが各メンバーに「今年、印象に残っている出来事」について、聞いていた。
そのトークコーナーで、メンバーの一人・松田迅さんの部屋には、サブスクリクション(定額サービス)による趣味のダーツ機が置かれているのだとか。実家の部屋にダーツバーに置いてあるようなダーツ機が来たのが、今年一番、印象的なできごとというわけである。最近の若者に、いかにダーツが浸透しているかという、象徴的なエピソードかもしれない。
もちろん、現在の主流はダーツ界のレジェンドである「青柳運輸」の青柳保之社長や後輩の元日本代表・小熊恒久氏らが親しんだハードダーツ(スチールダーツ)ではなく、ソフトダーツである。ハードとちがって、ダーツ機が勝手に点数などを計算してくれる。ゲームや数字に詳しくなくても、単純にダーツを楽しむことができる。
今年3月、大阪・道頓堀に「ダーツビルをオープンした」という知人に招待されて、8月、大阪に行ってきた青柳社長が、その「人気のスゴさ」を語っていた。
オープン半年もしていないのに、社長が「近くにもう一軒、ダーツのできるアミューズメントビルを建てる」と話していたというのである。
詳しい話は、その日会った上野駅側の居酒屋の酒場の雰囲気に消されて聞くことはできなかったが、まさにダーツは大ブームなのである。

ダーツ世界大会3位
青柳社長が訪ねた“ダーツビル”は株式会社ディスクシティ・インターナショナル(本社・神奈川県横浜市/三田明夫代表取締役社長)が運営するネットカフェ&カラオケ「DiCE」道頓堀店で、7階建てビルの地下1階がダーツフロアーになっている。
東京を中心に、北海道から宮城県、埼玉県、神奈川県に22店舗を構えていた同社が、満を持して関西に初出店した日本最大級という最新型アミューズメントビルである。
ちなみに、ダーツは最初の1時間が「ソフトドリンク飲み放題、ソフトクリーム食べ放題」付きの1000円で、未就学児童・小学生は無料、中学生は半額との案内もある。
すでにダーツ予備軍、将来のダーツファンとして、中学生以下を重要なビジネスのターゲットにしているわけである。
そんなソフトダーツの世界では、すでに中学生が世界で戦っていた!
新潟県新発田市の中学3年と1年の姉妹ペアが、2024年秋の台湾(台北)で開催された世界大会「アジア・パシフィック・カップ」に日本代表として参加。ガールズペア部門で3位に入賞している。同大会は世界ダーツ連盟(WDF)が主催し、2年に1度開かれる。
母親がプロ選手だったため、家にダーツボードがあったことから、姉は小学校1年、妹は幼稚園のときにダーツを始めた。始めは遊びだが、やっているうちにダーツが面白くなって、いまは日本スポーツダーツ連盟(JSFD)に登録。本格的に取り組むようになっているということだ。
革命的なソフトダーツ機
ソフトダーツ機の導入によって、若者たちにすっかりダーツ人気は定着しているようだが、日本のダーツ草創期、「ダーツをオリンピック種目に」という、儚い夢を描いていた、例えばダーツに命を賭けた日本初のプロダーツ連盟の小山統太郎氏らの思いは、いまだ実現に至ってはいない。
そうした動きは文部科学省に対する働きかけ、その成果としての公益社団法人「ダーツ連盟」の結成などに結びついているようだが、健全なスポーツとしてのダーツ、プロの認定団体としての活動が定着していても、かつてのような「ダーツをオリンピック種目に」と言った声は、ダーツ業界からは聞こえてこない。
現実には、その夢は一時は大きなブームになり、テレビ番組ができて、何人ものスターを生んだボーリングが、オリンピック種目にはならなかったのと似たようなものかもしれない。
近年の五輪競技が、スケートボードやサーフィン、さらにはブレンキンといった、およそ従来のスポーツのイメージにはない種目が選ばれる時代ではあっても、ダーツゲーム機を前に選手が金メダルを競うといったイメージは描き難い。
というよりも、ハードからソフトが主流になって、スポーツとはいえ、ゲームの要素も少なくない。オリンピックの可能性は、すっかり遠ざかっているように思われる。
だが、その一方で、大手ゲーム機メーカーが主催するダーツ大会、各地のダーツバーが連携した大会など、ダーツの裾野はどんどん広がっている。
かつて、日本に暮らす外国人が大使館や数少ない六本木などのダーツバーで、ダーツを楽しんでいたハードダーツの時代から、まさに大衆国家アメリカから上陸したソフトダーツ機は、当然ながら、新参ものだけに、当初はナンセンスとバカにされながらも、実際にやってみれば、確かに新しい時代の先を行くものとして革命的であった。
エレクトリックダーツの登場
ソフトダーツが日本に登場する前、日本人が「ダーツをやっている」というと「エッ、ダンス?」と聞き返される、そんなこともあったという。
ちょっと信じられないけど、そのダーツは根強い人気を誇ったものの、確かに日本では競技人口はなかなか増えず、スポーツとしての認知度も低かった。それはダーツ大会のスポンサー数、つまりは大会の運営や賞金額にも直結する問題である。
そんな日本のダーツ業界を大きく変える革命的な出来事が、自動計算機能を持つソフトダーツマシーンの登場であった。
ソフトダーツの歴史を振り返れば、もともとは1982年にアメリカのメダリスト社が「エレクトリックダーツ」と呼ばれる電子系のダーツボードを開発。1999年に日本に上陸した。それ以降、日本のダーツ界はハード(スチール)ダーツとソフトダーツとに分かれていく。
ソフトダーツを「素人の遊び」と見ていたハードダーツファンも、実際にやってみれば同じダーツである。計算など自動的にやってくれる手軽なスピード感は、ハードとは異なる敷居の低さがある。
実際に、日本にダーツが定着することになるのは、アメリカ発のソフトダーツマシーンが上陸してからだ。
当時、メダリスト社のスペクトラムとダーツワールドのD-1がしのぎを削っていて、比較的ライトなユーザーが多かったスペクトラムに対して、機能性にこだわるコアな層に人気なのがD-1だったと言われていた。

プロ資格認定の3団体?
そんな状況が大きく変わることになったのが、2004年にメダリスト社とゲームメーカー「セガ」が組んで、新機能としてICカードに履歴を残せるソフトダーツ機「ダーツライブ」が登場したことだ。
IT技術と結びつくことによって、個人記録を蓄積できたり、ネットワーク対戦機能を持つなど、まさにゲーム感覚のエンターテインメント性の高い競技として、急速に普及することになった。
2005年には、同様にICカード付きの「フェニックス」が登場。2007年に日本初のソフトダーツプロトーナメントとして「PERFECT」が設立された。
その1年後、D-1を母体にD-CROWNが設立されて、国内のプロリーグ、つまりは賞金の出るトーナメントが開催できるようになっている。
とはいえ、2012年にはD-CROWNが財政難で活動停止状態になって、代わりにソフトダーツマシンのシェアNo.1のダーツライブが、プロ団体「ダーツJAPAN」をスタートした。現在は、PERFECTとJAPANの2団体が、それぞれ全国各地でツアートーナメントを開催している。
PERFECTはソフトダーツの社会的認知の獲得と、スポーツとしての地位向上を目的として設立されたプロソフトダーツ団体であり、毎月、全国各地でダーツ大会「PERFECTツアー」を開催している。
一方のダーツライブ社が特別協賛するツアーJAPANも、ダーツが盛んになれば、ダーツマシンも売れる。ダーツ振興のため、年間の賞金総額が1億円とかで、元日本代表のレジェンド・小熊氏が「昔とちがって、一部のプロもダーツだけで食べていけるようになっている」というのも、あながち嘘ではないようだ。
とはいえ、そのダーツプロも、それぞれの団体がプロ資格の認定をしていて、さらに公益社団法人の「日本ダーツ協会」がプロ・指導員資格の選定を行っているのだから、素人には「どうなっているの?」との疑問が湧いてくる。
ハードダーツの草創期にも、いくつかの団体がそれぞれ勝手な動きをしていたが、ソフトダーツも似たようなものなのか。
オリンピックなど、とても無理なようだが、ダーツの始まりは「ラブストーリー」である。男女間のできごと同様、諍いはつきものということかもしれない。







コメント