SMAP中居正広もサントリー新浪剛史も、どこで間違ったのか? 「危機管理の時代」一家に一冊『危機管理広報大全』を!?
- vegita974
- 10月4日
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SMAP中居正広もサントリー新浪剛史も、どこで間違ったのか?
「危機管理の時代」一家に一冊『危機管理広報大全』を!?


7人の敵がいる?
東京・内幸町の「日本プレスセンター」で行われた山見博康氏の著書『危機管理広報大全』(自由国民社)の出版記念会に出席したのは、一年近く前の2024年11月のことである。出版記念会の報告を兼ねて、同書に関するレポートを書かなければと思いながらついタイミングを逸して、今日に至ってしまった。
しかし、戦争の続く世界はさておき、日本社会に目を向ければ、相変わらず低レベルの様々な“危機”が、世間並びにメディアを騒がせている。その意味では、危機管理はいまなおホットな話題である。
そんな一つ、ジャニーズスキャンダルに連なるSMAP中居正広氏の女性トラブルもサントリー新浪剛史氏も、どこで間違ったのかが、何かと気にかかる。
中居問題はフジテレビそのものを揺るがすほどの問題に発展して、新浪氏はローソン等での昔の行状が暴かれる経営者失格の事態を招いている。
その昔、男は「外を出れば7人の敵」と言われた。そんな小説もあった。事実、作家・石川達三氏による『七人の敵がいる』(新潮文庫)は、大昔だが、1973年に青山学院大学の春木教授が女子学生と研究室で関係を持って「強姦罪」で刑事告訴された事件がモデルになっている。地上げに絡んだハニートラップだったことを明らかにするドキュメンタリーとして、NHKでドラマにもなっている。
いわゆる学園内のセクハラ・盗撮などは、いまもしょっちゅう問題になっている。昔は姦通罪があったが、とっくになくなった時代に、週刊誌などでは不倫スキャンダルが何人もの有名人を世の中から葬り去っている。どこもかしこも敵ばかりである。
もっとも、危機は男性ばかりではない。静岡県の田久保真紀・伊東市長の学歴詐称疑惑が話題になっている最中、群馬県の小川晶・前橋市長のラブホテル密会問題など、次から次へと自ら敵をつくり出している。

いわゆる「危機管理」とは、古くは1962年のキューバ危機に際して、アメリカで使用された「クライシス・マネジメント」の邦訳だとされる。だが、いまではただの一般市民が、外に出ずに家に籠もっていても、ネットやメール、SNSで油断のならない詐欺や事件に巻き込まれる。そんな不思議な時代である。
「危機管理」とは、もともとは何か危機が発生した場合に、その負の影響を最小限にとどめるとともに、いち早く危機状態から脱出・回復を図ることを基本とするマネジメントのことであり、リスク管理を含めた幅広い対応を意味する用語である。
国家危機に関する用語が、企業へ、さらにはあらゆる問題にまで対応が求められるような状況になって、山見氏の『危機管理広報大全』は、かつての「電話帳」や自由国民社の『現代用語の基礎知識』ほどの分量、つまりはB5版1600ページになるわけである。
ちなみに、同書は2013年4月に出版されたロングセラー『企業の不祥事・危機対応広報完全マニュアル』(720ページ)をベースに、その後、執筆に4年半かけて、改題・改訂した決定版として上梓されている。

円卓コンフィデンシャル
危機管理の決定版としての『危機管理広報大全』の出版から1年後の今日、改めて思うことは、別にヨイショするわけではないが、本書の価値は衰えることはない。そこがよくある危機管理本、ハウツー本とのちがいだろう。
事実、危機管理が時代のキーワードであることから、2025年8月には、テレビ東京の「円卓コンフィデンシャル」に、その日のテーマ「危機管理広報」に、マルチタレント伊沢拓司氏、アンジャッシュの児嶋一哉氏、テレビ東京解説委員の大浜平一郎氏らの出演者に混じって、山見氏がゲストの一人として登場している。
実際に、分厚い本書をパラパラめくっていると、その理由がよくわかる。
ただ、みなさん忙しい時代に、落ちついて、こんなに分厚い本を読む気にはならないというよりも、読む気になれないことも確かである。
そんな残念な時代は、手紙よりもメール、メールよりももっと手軽なSNSという具合で、便利と効率を最優先して、なるべく短いセンテンスが主流となっている。
結果、真実(ファクト)よりも手軽な真実らしさ、さらには嘘(フェイク)の情報が同じF情報として、同一のフィールドで並列する。ネットのみならず、今日の世界を見ていれば、真実も嘘も似たようなもの、同じゲームの大した意味のないさじ加減でしかない。
『危機管理広報大全』の表紙には「あらゆる危機局面の内外実務一切を網羅」と書いてある。嘘ではない。
帯には「全企業必携」との大きな文字に「圧倒的情報量の危機管理辞典」とあり、元経済産業省事務次官の望月晴文氏推薦!」ということで、望月氏の写真が載っている。
そして「想定しうるすべての問題はもちろん、危機管理の常である『想定外の事象』にも本書で備えれば、十分対応できるだろう」と、中居正広氏、新浪剛史氏などに読ませてあげたかった内容になっていることがわかる。
ページ数も多いが、価格も9900円+税と破格である。だが、金を惜しめば「後悔先に立たず」との現実が待っている。

一家に一冊!『危機管理広報大全』
かつて岩波書店の辞書『広辞苑』を読む楽しみ、効用を語った『広辞苑を読む』(今野真二著)が岩波新書になっていたが、山見氏の『危機管理広報大全』も危機管理とは無縁な者でも、読書の喜びを味わうことができる。よくある危機管理本との大きな違いが、そこにある。
昔の電話帳か、あるいは『現代用語の基礎知識』のような分厚い本書のどのページを開いても、著者を知る者には、そのすべての一節から山見氏の話す声が聞こえてくる。出身地の福岡なまりに混じって、神戸製鋼時代、ドイツ駐在など、海外勤務が多かった外国語に堪能な人物特有の言葉づかいが感じられる。
どのページを開いても、読んでいると著者がどれだけ読み返し、推敲を重ねたかが手に取るようにわかる。様々な制約と事情等から来る苦心・苦難があったとしても、たぶんそれ以上に自らの人生の集大成として、その取り組みを楽しんでいる様子もまた、本書のどこを開いても実感できる。
特に、山見氏が本書の至る所に、彼が関わりを持った企業・業界・ビジネスを語りながら、長い人生経験から来る自分らしさのすべてを効果的に織り込んでいて、ほとんど企業の危機管理とは無縁の立場の者にも、一般的な「危機管理」のお固いイメージを裏切る読みやすさと、意外な情報・知識を得ることができる、そんな楽しさがある。
本書にはもちろん、セクハラもネット炎上など、あらゆる危機への対応が網羅されている。どこまでを、危機管理と呼ぶべきはさておき、一家に一冊『危機管理広報大全』が必要な時代というわけである。

ダーウィンが来た!
本書「はじめに」は「危機は常に想定を遙かに超える!」の文章で始まる。そして、近年の新型コロナウイルス感染症からロシアのウクライナ侵攻、世界各地を襲う天変地異による災害、企業・団体・自治体等の事件・事故・不祥事、ネット拡散による情報パンデミックなどの危機を取り上げた後に、一行開けて「そういう状況においてこそ『ダーウィンが来た!』を欠かさず視る。NHKの毎週日曜日の7時半」と、意表をつく指摘がなされる。
大人も子どもも、家族揃って楽しく、ドキドキしながら見られる番組だが、危機管理の専門家である山見氏の興味は「“危機管理の原点”がそこにあるからだ」と記す。
「“人間は動物である”こと」「“生きることそのものが危機管理である”こと」との指摘とともに、危機管理の本質を披瀝していく。
以下、割愛するが「はじめに」の最後には「本書を読めば、広報・コミュニケーションの本質から実務の基本・実践法がプロセスで判る」以下、「本書を使えば(略)」「本書を活かせば」「本書を辿れば」とあって「本書を学べば、人生を顧み、人々の幸せに繋がる生き方のヒントが見出せる」と書かれている。
そして「本書は、私が長年確信し、実践してきた精神のエキスである。それでは、第1ページを開こう」との一文で本文へと続く。
しかも、末尾には吉田松陰の『士規七則』から「凡そ生まれて人たらば、宜しく人の禽獣とは異なる所以を知るべし」の他、同『講孟箚記』からの人生訓などが、さりげなく掲載されている他、山見氏自身の体験から来る読者へのメッセージが散りばめられている。
まさに、分厚い本書の隅から隅まで至れり尽くせりなのである。

真人間になれ!とは?
いかに本書がいわゆる危機管理本と異なるかは、第1章が「お化粧」の話から始まることでもわかるはずだ。
「人も会社も、幼い時からきちんとした躾や正しい教育を受けて学び、成長すると、きっと立派な人間・会社になるだろう。こんな人や会社は、問題を起こす確率は低く、もし起こしても小さく解決はたやすい」「最上の危機管理とは、立派な人や会社になっていくことである」
たぶん、この指摘が分厚い『危機管理広報大全』の結論である。しかし、わかっちゃいるけど、できないのが人間である。7人の敵どころか、見えない敵に囲まれて、立派な人や会社でいることは、かなりの努力が必要とされる、そんな時代である。
しかし、どんな理不尽な人生の危機に襲われても、幼い時からきちんとした躾や正しい教育を受けて学び、成長し、なお人として立派であろうとするならば、中居氏や新浪氏のような危機に際しても、ちがう展開になっていたはずである。
と、そんなことを思うのも、例えば山見氏が国際セキュリティの章にまつわる人生訓・警句として、明治生まれの哲学者・森信三先生『修身教授録』の一文を紹介しているからである。
「『世の中は正直』ということは『最善観』の立場、『我が身に降りかかってくる一切の出来事は、自分にとって絶対必然であると共に、実に絶対善である』と言う信念と共に密かに抱いている二つの根本信念であります」
修身を掲げる教育の原点には、躾け=アートが欠かせないことから、同書の最終章(20章)には、例えば「仕事を全てアートに高めよ!」とある。人生にも仕事にも、もちろん危機管理にもアート、つまりは美と理想が欠かせないためである。
そのベースには「至誠を貫き、嘘なく処する!」とあって、どんな危機に際しても、誠実に優る対処法はないことを説いている。その上で「真の教養を高めよ!」と書いて、さらに「王道を凛々と歩く広報卓越者を目指せ!」との理想を語る。
結果、ごく真っ当な結論「真人間になれ!・・・危機管理広報の達人は人々を幸せに導
く!」との危機管理広報の極意に至るわけである。
というわけで、危機管理に関する全てを網羅するならば、結果、人間そのものに向き合い、その先にわれわれが生きている地球に至る。『危機管理広報大全』が危機管理をテーマにしていながら、どのページを開いても、新たな知識・情報・発見に満ちている理由である。


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